ギレルモ・デル・トロ「アニメーションは映画であり、ジャンルではない」|2023年オスカー受賞スピーチ

はじめに――アニメーションは子ども向けの「種類」なのか

アニメーションという言葉を聞いて、真っ先に子ども向けの作品を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、絵や人形を動かすという表現の方法と、恋愛、冒険、ホラーなど物語の種類は同じではありません。映画監督ギレルモ・デル・トロは、2023年のアカデミー賞でこの違いを端的に語りました。「アニメーションは映画であり、ジャンルではない」という言葉です。

英語原文は「Animation is cinema, animation is not a genre」。制作・配信元Netflixの公式記事に、監督が2023年3月12日の受賞スピーチで述べた発言として記録されています。本記事の日本語は説明訳であり、公式の日本語字幕から採った逐語訳ではありません。人物・受賞年・作品・発言が結びつく公開記録をもとに読み解きます。

「アニメは映画ではない」と考える人だけを批判する話ではありません。なぜアニメーションという手法が、特定の年齢や題材の枠に閉じ込められがちなのか。逆に、どんな表現の可能性があるのか。作品をどう分類するかと、どう評価するかの違いを考える入口になる発言です。

2023年、受賞したのは『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』

映画芸術科学アカデミーの2023年公式受賞一覧では、長編アニメーション映画賞の受賞作は『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』です。受賞者にはギレルモ・デル・トロに加えてマーク・グスタフソン、ゲイリー・アンガー、アレックス・バルクリーが記載されています。一人の監督の名言として読む場合も、共同制作による受賞だったことを忘れないようにしたいところです。

作品はストップモーションと呼ばれる手法を中心に、人形を少しずつ動かして撮影された映画です。Netflixの2023年3月13日付公式記事は、デル・トロとグスタフソンが共同監督を務めたこと、制作に長い時間をかけたことを紹介しています。手法を選ぶこと自体が、作品の表現や制作過程に深く関わる例です。

同じ名前の『ピノキオ』でも、カルロ・コッローディの原作と、2022年公開のデル・トロ版映画は同一の物語ではありません。映画は歴史的な舞台設定を変え、独自の解釈を加えています。古典の原作研究と、2023年の映画賞スピーチは別の主題であり、ここでは後者を扱います。

原文は受賞スピーチのどこにあるのか

Netflixの公式記事「Guillermo del Toro Takes Home Yet Another Oscar for ‘Pinocchio’」は、3月13日に受賞を伝え、冒頭近くでデル・トロの言葉を掲載しました。「Animation is cinema, animation is not a genre」に続いて、アニメーションを次の段階へ進め、議論の中に置き続けてほしいと呼びかけたと記録しています。短い一文だけでなく、映画界へ向けた提案が続く発言です。

Netflixは同年1月11日のゴールデングローブ賞受賞を報じた公式記事でも、デル・トロがアニメーションは映画であり、子ども向けのジャンルではなく表現媒体だと語ったことを紹介しています。同じ考えを異なる授賞式で繰り返していたという文脈を確認できます。

ただし、両授賞式の原文を一つにつなげて同じ瞬間に述べたように引用するのは不正確です。アカデミー賞の発言とゴールデングローブ賞の発言は別々の出来事です。いつ、どの賞で、何を言ったのかを分けておくことが、短い名言を正しく扱う基本になります。

「媒体」と「ジャンル」はどう違うのか

ジャンルは、ホラー、コメディ、ミステリー、恋愛など、作品がどのような物語や体験を提供するかを整理する言葉です。一方、アニメーションは、動きを一コマずつ作るなどして画面に表現する技法や媒体を指します。作り方と、物語の種類は異なる問いです。

アニメーション作品にも、子どもと一緒に楽しめる作品、歴史を扱う作品、怖い作品、複雑な心理を描く作品があります。「アニメーションだから子ども向け」と判断すれば、作品ごとの年齢区分や内容を確認する機会を逃すかもしれません。作品の適切な対象年齢は、表現手法だけでは決まらないのです。

ただし、ジャンルという分類が常に悪いわけではありません。映画を探す際に、どんな物語が好きなのかを知る手がかりは必要です。デル・トロの主張は、分類を便利な道具として使うことと、それを理由に表現の可能性を狭めることを区別するよう促しています。分類は理解のために使い、可能性を決めつけるためには使わないという読み方ができます。

ストップモーションを選ぶことの意味

『ピノッキオ』の制作では、人形や美術を実際に作り、撮影し、少しずつ動きを積み重ねていきました。Netflixの作品公式資料は、ストップモーションの制作過程や共同監督の仕事を紹介しています。動きが自然に見える短い場面にも、見えにくい手作業と共同作業があることが分かります。

こうした制作手法は時間がかかることもあります。それでも、手作りの質感や物理的な空間が生み出す独自の表現があります。新しい技術と古くからある技法を、どちらが優れているかという単純な序列だけで比べるのは難しいでしょう。作品が何を描きたいかによって、適した表現手段は変わるからです。

デル・トロの発言は、実写とアニメーションのどちらが上かという争いを起こすためのものでもありません。映画として物語を届けるための複数の手段を、対等に議論してほしいという願いとして読めます。手法の違いを理解することは、作品の評価の幅を広げることにもつながります。

仕事や創作にもある「この人はこの分野」という枠

表現の方法が固定された分類として扱われることは、映画以外の分野にも似た問題を生みます。例えば「文章の仕事をしている人だから映像は作れない」「技術職だから企画はできない」と決めつける場面です。現在の得意分野と、今後できるようになることは必ずしも同じではありません。

もちろん、新しい分野には学ぶべき知識や技能があります。「枠を超える」という言葉だけで専門性や経験を無視してよいわけではありません。むしろ、異なる分野の特徴を理解することが、新しい挑戦の準備になるでしょう。決めつけを避けることと、必要な訓練を省かないことは両立するのです。

普段作品を選ぶときにも、なじみのない表現を一度試してみることはできます。作品の年齢区分や内容を確認したうえで、自分に合うかどうか判断する。分類を入り口にしながら、そこに閉じ込められないことが、この言葉の現代的な使い方かもしれません。

関連する記事と原典

原作との違いに関心がある場合は、『ピノキオ』原作のあらすじと結末も参考になります。原作の出版史と、2023年の映画賞における監督の発言は異なる話題です。作品の歴史を知ってから、その新しい翻案を考えるという読み方ができます。

日本の映画制作と比べるなら、山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』受賞スピーチの記事も関連します。制作体制や表現手法は違いますが、異なる環境から映画を作り、世界の賞へ向けて言葉を届けるという点で比較できます。同じ映画賞でも、発言者が伝えたい主題は異なるものです。

参照した資料は、Netflixの2023年3月13日付アカデミー賞受賞記事、同年1月11日付ゴールデングローブ賞受賞記事、アカデミー公式の第95回受賞記録です。映画の制作者・配信元による発言記録と、主催団体の受賞者一覧を別々に確認しています。

まとめ――アニメーションの先にある物語の可能性

ギレルモ・デル・トロは2023年3月12日のアカデミー賞で、アニメーションは映画であり、単一のジャンルではないと語りました。この発言はNetflixの作品公式記事に記録され、受賞作はアカデミー公式の一覧で確認できます。発言の場面と受賞結果に、別々の一次的な確認先がある事例です。

言葉の中心にあるのは、アニメーションが子ども向けに限られた形式ではなく、さまざまな物語を届けられる表現手段だという考え方です。作品を理解するための分類は便利ですが、分類を理由に作品や作り手の可能性を先に決めてしまうべきではありません。何が描かれているのかを、実際の作品から考えることが大切です。

映画の技術が変わっても、何を感じ、どんな問いを持ち帰るかは、観客が作品と向き合う中で生まれます。ジャンル名より先に、そこで何が表現されているかを見る。その小さな習慣から、映画の楽しみ方は広がっていくでしょう。

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