はじめに――前向きな音楽を作ると決めた理由
世界をもっとよい場所にしたいと願うとき、何から始めればよいのでしょうか。大きな言葉を掲げるより、まず自分が続けられる行動を選ぶ。歌手リゾは、2023年のグラミー賞受賞スピーチで、自分が音楽を作り続けてきた理由を振り返りました。周囲が変わるのを待つだけでなく、自分が変化の一部になるという趣旨の言葉です。
Recording Academyが2024年1月19日に公開した公式の振り返り記事によると、本人は英語で「I had to be that change」と語っています。本記事の「自分が変化にならなければ」は、その一節の説明訳です。本人が日本語で話した言葉でも、どこかの名言集から転載したものでもありません。
この言葉は、誰でも自分ひとりの努力で社会の問題を解決できるという約束ではありません。リゾは音楽という自分の活動を通じて、どんな気持ちを届けたいのかを話していました。発言の場面と、そこから考えられる日常への応用を分けて読むことが大切です。
2023年グラミー賞で受賞したのは『About Damn Time』
第65回グラミー賞の公式受賞記録によると、2023年の年間最優秀レコード賞は、リゾの「About Damn Time」に贈られました。Recording Academyの公式データベースに受賞者と作品名が記録されています。アルバム賞や楽曲賞ではなく、年間最優秀レコード賞のスピーチであることを確認できます。
同じ年の最優秀アルバム賞はハリー・スタイルズの『Harry’s House』、年間最優秀楽曲賞はボニー・レイットの「Just Like That」でした。似た名称の賞でも評価の対象や受賞者は異なります。受賞スピーチを正確に読むには、賞の部門まで確かめることが必要です。
受賞作品「About Damn Time」は、リゾの音楽活動の一部です。今回扱うのは歌詞の内容ではなく、賞を受け取った本人が自分の仕事について語った言葉です。楽曲の一節と授賞式での発言を混同しないため、記事の中心はスピーチに置きます。
「I had to be that change」は何の話の中で出たのか
Recording Academyの公式記事「GRAMMY Rewind: Lizzo Thanks Prince For His Influence」は、受賞時の発言を具体的に紹介しています。リゾはミュージシャンのプリンスを失ったことをきっかけに、前向きな音楽を作ることへ人生を向けたと振り返りました。その話の中で「I had to be that change」と語っています。言葉の対象は抽象的な成功哲学だけでなく、本人が選んだ音楽の方向性です。
公式記事は、本人が当時、自分の音楽が十分に理解されていないと感じていたことも紹介しています。それでも自分が大切にしたい表現を続けたという経緯です。周囲からすぐに認められたから前向きな音楽を作ったのではないという時間の順序が見えてきます。
ただし、そこから「信念を持てば必ず賞がもらえる」という法則は導けません。作品の評価には制作に関わる人々、時代の動き、聴き手との出会いなどさまざまな条件が関係します。本人の経験を大切にしながら、万人に同じ結果を保証する言葉へ変えないことが重要です。
プリンスへの感謝から見える音楽のつながり
リゾは受賞スピーチで、プリンスの音楽から影響を受けたことを紹介しています。憧れのアーティストが残した表現を、後の世代が新しい作品へつなげていく。音楽には、同じ場所にいなくても誰かの仕事が別の誰かの背中を押すという側面があります。ひとりの表現の決断には、それ以前の作品との出会いがあるのです。
もっとも、影響を受けたと話すことと、作品が同じ内容になることは違います。何を受け取り、どこを自分なりに変えるかは、表現する人によって異なります。先人への敬意と、自分らしい創作の両方を認めることができます。
グラミー賞の公式振り返りでは、彼女が受賞に際して制作チームや周囲の人々にも感謝したと記録されています。個人名で受け取る賞の背後にも、多くの人が関わります。一人で変化を起こすという美談だけにせず、共同制作の働きを見ることも大切です。
「ポジティブな音楽」は苦しい気持ちを否定するのか
リゾが前向きな音楽を作ると決めたことは、つらい気持ちや怒りを持ってはいけないという意味ではありません。作品に励まされる人もいれば、静かな曲や悲しい曲に自分の気持ちを重ねる人もいます。音楽が与える支えの形は一つではないのです。
前向きな気持ちになることを強制されると、かえって苦しくなる場合もあります。今回の発言は彼女自身の創作上の選択を語ったもので、他人へ感情のあり方を命じたわけではありません。自分が届けたいものを選ぶ自由と、聴く人が感じる自由を分けておく必要があります。
それでも、日常のなかで誰かを励ます言葉や作品が生まれることには価値があります。問題を見ないふりするのではなく、現実を知ったうえで少し希望を持てる表現を作る。明るさを押しつけるのではなく、選べるきっかけを届けるという読み方ができます。
仕事や創作で、自分が変化の一部になるには
職場で改善してほしい点に気づいたとき、すべてを自分で解決しようとする必要はありません。それでも、困りごとを整理する、誰かに提案を伝える、小さく試してみるといった行動はできます。自分が変化になるとは、問題のすべてを一人で背負うことではないと考えられます。
たとえば情報共有がうまくいかないチームなら、まず話し合いの記録を読みやすくする工夫から始められます。ただし、本来組織が責任を持つ課題を、個人の善意だけで解決しようとするのは無理があります。できる小さな行動と、組織が変えるべき仕組みを区別することが必要です。
創作に取り組む場合も、「誰にも評価されなかったら無意味だ」と決めつけるより、自分が何を届けたいのかを確かめる方法があります。そこから作品の作り方や伝え方を改善していく。大きな結果を先に約束するのではなく、具体的な制作を続けるという姿勢が参考になります。
別のグラミー賞スピーチと読み比べる
アデルの2017年グラミー賞スピーチでは、受賞者が同じ部門に候補となったビヨンセへの尊敬を語りました。リゾが自分の音楽の方向性を語るのに対し、アデルはほかのアーティストの作品をたたえる場面です。賞を受けたときの言葉にも、異なる主題があることが分かります。
ビヨンセの2025年グラミー賞スピーチでは、ジャンルという区分が表現者の可能性を制限する場合があることを考えました。どの分野で自分の音楽を作るかという問題と、何を届けたいかというリゾの言葉を比較できます。表現の自由を、内容と分類の両方から見るための関連リンクです。
関連リンクは、リゾの発言が本物だと証明するための資料ではありません。真正性を確認する際は、Recording Academyによる本人スピーチの公式振り返りへ戻る必要があります。出典と、考えを広げるための関連記事の役割を分けることが重要です。
まとめ――自分で選んだ表現を続けること
リゾは2023年のグラミー賞で「About Damn Time」によって年間最優秀レコード賞を受賞し、プリンスへの敬意や、前向きな音楽を作ると決めた経緯を語りました。その中に「I had to be that change」という言葉があります。発言の原文と受賞部門を、Recording Academyの公式資料で確認できます。
この言葉は、すべての問題を個人の意志で変えられると断定するものではありません。自分が届けたいと考える表現へ、具体的に取り組もうとした本人の経験です。何を変えたいのかを考え、自分にできる行動を選ぶという意味で参考になります。
主な出典は、2024年1月19日公開のRecording Academy公式スピーチ記事、同団体の受賞スピーチ映像、2023年の公式受賞結果一覧です。見出しは説明訳であり、楽曲の歌詞を引用したものではありません。