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「犬猿の仲」の意味と由来|犬と猿はなぜ不仲のたとえ?古い用例と正しい使い方

はじめに――「犬猿の仲」はどれほど仲が悪いこと?

「犬猿の仲」は「けんえんのなか」と読みます。互いに相手を嫌ったり敵視したりして、非常に仲が悪い関係を表す慣用句です。学校の同級生や仕事上のライバルについて「あの二人は犬猿の仲だ」と言うことがあります。

ただし、意見が一度食い違っただけで犬猿の仲とは限りません。普段は協力している二人が会議で異論を述べたとしても、それは議論の一部かもしれないからです。一時的なけんかと、長く続く敵対関係を区別すると使い方が自然になります。

犬と猿は実際にいつも争っているのでしょうか。どうしてこの組み合わせが人間関係の比喩になったのでしょうか。言葉の意味と生き物についての現実、そして古い資料に残る言い方を分けて確かめると、この慣用句の特徴が見えてきます。

犬と猿は昔から「仲が悪い組み合わせ」だった

小学館『精選版 日本国語大辞典』の「犬猿の仲」は、犬と猿のようにいがみあう間柄を表すと説明しています。同じくイミダス「ルーツでなるほど慣用句辞典」も、犬と猿を仲の悪い代表として扱うところから生まれたたとえと説明しています。現実の動物そのものより、文化の中にできた対立のイメージが言葉になっています。

犬は人と暮らす身近な動物で、猿も昔話や絵にしばしば登場します。二つの動物を並べれば、多くの人がすぐに姿を思い浮かべられます。具体的な動物の名前を使うことで、抽象的な「不仲」が一瞬で伝わることが、この表現が長く使われた理由の一つと考えられます。

しかし「犬と猿は必ずけんかする」という自然科学上の法則ではありません。野生動物の調査を行う野生動物保護管理事務所のフィールドノートには、犬と猿の遭遇では猿が逃げる場面が多いという観察が記されています。動物の行動を単純な「けんか好き」という性格の話に置き換えないことが大切です。

古い「犬と猿」と、現在の「犬猿の仲」の用例

古い日本語の使用例について、『精選版 日本国語大辞典』の「犬と猿」は、狂言『竹生島参』で犬と猿の仲が悪いという趣旨の台詞を採録しています。現在の「犬猿の仲」という四文字を含む言い方になる以前から、犬と猿の不仲という組み合わせが知られていたことを考える材料になります。

一方、同辞典の「犬猿の仲」の項目は、1971年の井上ひさしの作品をその形の用例として挙げています。古い「犬と猿」の比喩と、辞典に採られた現行形の例は別々の資料です。1971年に言葉が初めて作られたと断定する根拠にはなりません。

さらに、十二支の動物が神様のもとへ向かう途中で言い争った、という物語を聞くこともあります。そうした話は由来の説明として流通しますが、物語が広まっていることだけで、慣用句の成立時期や実際の発生理由が証明されるわけではありません。本記事では、確認できる辞典の用例を基準に説明します。

「不仲」「ライバル」「苦手」のどれとも同じではない

「犬猿の仲」は強い表現です。二人が互いに相手を敵視しているような状態を指すため、単に「気が合わない」「話す機会が少ない」とは区別したいものです。相手の片方だけが苦手意識を持っている場合にも、安易に双方の対立だと断定しないほうが正確です。

ライバル同士なら必ず不仲というわけでもありません。同じ目標をめざして競いながら、相手の実力を尊重している関係もあります。競争の有無と、個人的な敵意があるかどうかは別です。「切磋琢磨する関係」と言ったほうが適切な場面もあるでしょう。

また、「類は友を呼ぶ」は、似た考え方や好みの人が集まりやすいことを表します。犬猿の仲は、反対に互いの衝突に目を向ける言葉です。似ているから親しいとも、違うから必ず仲が悪いとも限らないことが、二つを比べると分かります。

仕事や日常で使う際の注意点

たとえば、職場で二人の担当者の間に意見の違いがあっても、外から「犬猿の仲だ」と決めつけると関係が悪化する場合があります。本人同士が何を問題にしているかを聞かず、強い言葉で関係を固定しないことが大切です。

実際に衝突が続いているなら、双方が納得できる役割分担や、話し合う場を考えることができます。ただし、安全や権利に関わる問題まで、単なる「相性の悪さ」で片づけるべきではありません。対立の原因と、表面に見える感情的な衝突を分けて調べることが必要です。

親しい人との関係を維持するためには、「親しき仲にも礼儀あり」という別のことわざが参考になります。犬猿の仲は不和を描写する言葉ですが、こちらは関係をこわさないための態度に焦点を当てています。相手を分類することより、これからどう接するかを考えるほうが役に立つ場面も多いでしょう。

まとめ――動物のたとえだけで人を決めない

「犬猿の仲」は、互いに敵視しあうほど仲が悪い関係を表す慣用句です。ただ意見が違うことや、片方が少し苦手に思うことと混同しないのが適切な使い方です。

狂言『竹生島参』では「犬と猿」の不仲という古い言い回しが辞典に採録され、現行の「犬猿の仲」については1971年の作品の用例も紹介されています。今回は辞典の採録内容を確認した段階で、当該台本や小説原本の逐語照合は行っていません。用例の存在と、慣用句が最初に生まれた年は区別しています。

主要資料:小学館『精選版 日本国語大辞典』『ことわざを知る辞典』「犬猿の仲」、同「犬と猿」、イミダス「犬猿の仲」、野生動物保護管理事務所の観察記録。本文は当サイト独自の解説です。原本の直接照合が未了のため出典タグ117(要検証)とします。

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