味の素「おいしさ、そして、いのちへ。」の意味と出典|2010年の企業スローガン

はじめに|「おいしさ」の先に置かれた「いのち」

「おいしさ、そして、いのちへ。」。味の素が企業の考え方を伝えるために採用した言葉だ。食品会社なら「おいしい」で十分に思えるかもしれない。しかし、ここではその先に「いのち」という大きな言葉が続いている。食べる楽しさと、健康や暮らしを支えることを結びつけるという姿勢が感じられる。

二つの言葉は、同じものを言い換えているわけではない。おいしさは味わう瞬間の経験であり、いのちは人が長く生きていくことに関わる。短い時間の満足と長い生活への責任を、ひと続きの文にしているところが特徴だ。

では、味の素はいつこの言葉を採用し、何を伝えようとしたのだろう。2010年の公式発表には、導入日だけでなく従来のスローガンとの関係も書かれている。印象的な響きから自由に意味を推測せず、企業が示した目的と区別して考えることにする。

出典|2010年1月28日付の味の素公式発表

味の素の2010年1月28日付ニュースリリースは、同年4月1日から「おいしさ、そして、いのちへ。」を正式なコーポレートスローガンとして導入すると記している。英語表記も併記されている。文言と企業への帰属、正式な導入年月日を一次資料で直接確認できる。

ここで注意したいのは、2009年の創業100周年記念スローガンとして既にCMなどで使われていたという説明だ。つまり、2010年4月がこの言葉を初めて考えた日だと断定できるわけではない。先行する記念キャンペーンでの使用と、正式な企業スローガンへの採用を区別したい。

同じ発表では、それまでの「あしたのもと」に代えて採用したことも説明されている。会社がいつからこの表現を公式な看板として掲げたかを理解するうえで重要だ。スローガン変更は単なる言い換えではなく、社会へ何を伝えるかという選択でもある。

「そして」の意味|味だけで終わらない理由

「おいしさ、そして、いのちへ。」という言い方では、二つの名詞の間に「そして」が置かれている。「おいしいこと」と「生きること」を切り離さず、つながるものとして提示している。味わいの喜びを入口に、もっと広い責任へ視線を向けるための言葉だ。

味の素の公式発表は、食事を通じた健康づくりへの科学的な取り組みや、アミノ酸技術による課題解決を挙げている。食品の味だけを良くするという目標より、事業の範囲が広い。企業が自らをどう社会に役立てたいかという方向を短く伝えている。

ただし、この言葉があることだけで、あらゆる商品が病気を予防し、全員の健康を改善すると保証されるわけではない。商品の成分、用途、安全性は別の情報から判断する必要がある。会社の願いと、個別商品について検証された事実を混同しないことが大切だ。

2009年の100周年|次の百年へ何を残すか

味の素は2009年に創業100周年を迎え、その節目にグループ理念を定めたと2010年の発表で説明している。その背景には、食と健康に関わる分野で人々の生活に貢献したいという考えがある。一世紀続いた会社が、次の長い時間に向けて役割を言葉にし直す場面だった。

長く続く企業は、同じ商品を作り続けるだけでは社会の変化に対応できない。食べ物への期待も、味だけでなく、栄養、環境、入手しやすさなど多面的になる。一つの言葉に複数の価値を入れるには、具体的な行動を伴わせる必要がある。

だからといって、このスローガンの採用だけで、食糧問題や医療の課題が解決されたと評価できるわけではない。実績を知るには別の資料がいる。2010年の資料は企業が示した決意の根拠であり、達成結果の証拠ではないことを押さえておきたい。

現代の読み方|一つの商品に複数の価値を見る

食べることには、空腹を満たすだけでなく、人と話す時間や地域の習慣をつなぐ働きもある。食品会社が「いのち」を語る背景には、そうした生活全体との関わりを考える余地がある。商品を手に取る瞬間だけでなく、その先の暮らしまで視野に入れる発想だ。

もちろん、栄養を考えることと食事を楽しむことは対立しない。一方、健康を気にするあまり食べる喜びが失われる場合もある。「おいしさ」と「いのち」の間にある緊張を、簡単な正解に押し込めない読み方がよいだろう。

食品企業の別の言葉として、キユーピー「愛は食卓にある。」がある。キユーピーは人との関係が生まれる場所を、味の素はおいしさから生命へ広がる方向を示す。同じ食品でも、何を中心に据えるかで企業の言葉は変わる。

まとめ|2009年の使用と2010年の正式採用を分ける

「おいしさ、そして、いのちへ。」は、味の素の2010年1月28日付発表によれば、同年4月1日から正式に使うコーポレートスローガンである。2009年には100周年記念の文言として先行して使われていた。正式採用の年月日と、それ以前の使用実績を区別する必要がある。

この言葉には、味覚の喜びにとどまらず、食と健康を通して暮らしに貢献したいという企業の方向性が示されている。宣言がどの程度実現しているかは別の検証が必要だが、当事者の説明に基づいて成立事情を確かめられる。

出典は味の素公式・2010年1月28日ニュースリリース。スローガンの文字列、正式導入日、制定の背景を一次資料で確認したため出典タグ114とする。

ほかの記事を探す

記事の訂正・出典情報は、お問い合わせから該当記事のURLと根拠資料をお知らせください。

↑ ページの先頭へ戻る