キッコーマン「おいしい記憶をつくりたい。」の意味と出典|2008年の企業スローガン

はじめに|おいしいのは味だけではない

「おいしい記憶をつくりたい。」。キッコーマンの企業スローガンは、ちょっと不思議な表現だ。食べ物はおいしいと言えるが、記憶までおいしいと言えるのだろうか。味覚の経験を、時間が経っても残る人との思い出へ広げたところに、この言葉の魅力がある。

食事のあと、何を食べたかは忘れていても、誰と話したかを覚えていることがある。逆に、一人で食べたお気に入りの料理が、気持ちを落ち着かせる記憶になる場合もある。料理の味と、そのとき過ごした時間は別々ではなく結びついて残ることがある。

では、キッコーマンはいつこの表現を採用し、どんな思いを説明しているのか。2008年の公式発表に、その背景が具体的に記されている。企業の説明と、読者が自分の経験に重ねる解釈を区別しながら一節を読みたい。

出典|2008年6月の企業ブランド刷新

キッコーマンの2008年12月11日付ニュースリリースは、同年6月下旬から新しいコーポレートマークを導入し、「おいしい記憶をつくりたい。」を新スローガンに掲げたと説明する。会社、文言、採用した時期を公式発表から直接確認できる。

同社はこの言葉の意味として、食にまつわる経験を通じて幸せな記憶が重なり、豊かな人生を送る助けになりたいという考えを示している。調味料の味を保証するだけでなく、食卓で生まれる体験まで視野に入れた企業の意思が込められている。

12月の発表には、写真を募集する企画も登場する。記憶を言葉で語るだけでなく、写真を通して思い出すきっかけを設けている。この企画はスローガン採用後の取り組みであり、言葉自体が12月に初めて生まれた証拠ではない点に注意したい。

「記憶がおいしい」という比喩|味と時間

記憶は食べ物ではないから、厳密には舌で味わえない。それでも「おいしい記憶」と言われると、楽しかった食事の時間を思い浮かべられる。実際の味覚を入口にして、思い出の温かさへ意味を移す比喩として働いている。

一緒に食べた人との会話や、料理を作った人の気持ちが、食事を思い出す手掛かりになることもある。キッコーマンの公式説明も、食卓の楽しさやうれしさを挙げている。食べるという行為には、栄養摂取だけでは測れない経験が含まれるという考え方だ。

ただし、食事の思い出が常に幸せとは限らない。苦手な食べ物や、落ち着かなかった食卓の記憶を持つ人もいるだろう。企業が目指す理想と、すべての人が経験した現実を同一視しないことも必要になる。

企業ブランドとしての役割|商品を超える約束

キッコーマンはしょうゆをはじめとする多様な商品を扱っているが、企業のスローガンは個別商品に閉じていない。公式のブランド説明でも、グループ全体の約束を簡潔に表すものとして位置づけている。それぞれの商品が届けたい価値を、共通した言葉へまとめたのである。

調味料は食卓に欠かせない場合が多い一方、食事の主役としては目立たないこともある。だからこそ、「記憶をつくる」という言い方は、製品の機能だけでは伝わらない役割を示す。自社が売るものではなく、使われた後に残る体験を考えるという発想だ。

もっとも、理想的なスローガンを掲げれば、商品の品質や価格が評価されるというわけではない。個々の商品に必要な検証は別にある。企業が表明する約束と、消費者が確かめる事実を区別することが大切だ。

現代的な読み方|思い出をつくることの自由

食卓を思い出深いものにしたいからといって、毎日手間のかかった料理を作る必要はない。簡単な食事でも気楽に話せる時間があれば、うれしい記憶になることがある。経験の価値を調理時間や料理の値段だけで測らないという考え方が役立つ。

また、家族全員がそろうことだけを理想とする必要もない。一人でゆっくり食べることを大切にする人もいれば、友人と外で食べる時間が特別な人もいる。誰とどこで食べるかの正解を決めず、それぞれにとっての心地よい食事を尊重するべきだ。

食品会社の別の言葉として、キユーピー「愛は食卓にある。」がある。キユーピーは食卓にある人間関係、キッコーマンは食体験が記憶として残ることに焦点を当てる。近いテーマでも、時間の捉え方が異なると比較できる。

まとめ|2008年の言葉が示す食の価値

「おいしい記憶をつくりたい。」は、キッコーマンが2008年6月下旬から掲げた新しいコーポレートスローガンである。2008年12月11日付の企業公式発表で文言と採用時期を直接確認できるため、出典タグ114とする。

この言葉は、味覚だけでなく、料理や食事の時間が人生に残す経験まで視野に入れている。食品会社が、自社の商品だけでなくその先の暮らしをどう良くしたいかを示す企業メッセージといえる。

出典はキッコーマン公式・2008年12月11日ニュースリリースとキッコーマン公式コーポレートブランド解説。2008年6月の採用と、12月の広報企画を区別し、独自の解釈を公式見解と混同しない。

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