はじめに|自分で考えることを物語にする
私たちは子どもの頃、身近な大人が正しいと教えることに疑問を持つことがある。その疑問は、単なる反抗として片付けられてしまうかもしれない。しかし児童文学作家の長谷川まりるは、自身の創作テーマを「自分の頭で考えること」だったと振り返った。物語を書く行為と、自分で判断したい気持ちが結び付いている。
この一節は、人から学ばなくても自分一人で答えを出せばよいという意味ではない。長谷川は多くの本を読み、創作同人会や講座で作品へ批評を受けてきた。他人の知識を受け取ることと、最終的に自分の考えを確かめることは両立するのである。
言われたことに従う方が楽な場面もあるが、納得できないまま従い続けると、何を大切にしたいのか分からなくなることがある。反発心をどう表現や学びへ変えていくかを、長谷川の創作経験から考えたい。
この名言の背景|ファンタジーを読み、隠れて書いた少女時代
朝日新聞の書籍メディア「好書好日」は2026年8月17日、長谷川まりるの児童文学『ぼくのシェフ』について本人インタビューを公開した。長谷川は『お絵かき禁止の国』でデビューし、『杉森くんを殺すには』などの作品を発表してきた。幼少期の読書から作家になるまでの経験が、作品の背景として語られている。
本人によると、家庭では魔術が登場する本などを好ましく思われず、好きなファンタジーを書いていることを隠していた時期があった。大人たちの決まりに疑問を持つ中で、創作の原点には怒りもあるかもしれないと振り返る。与えられた価値観だけでは説明できない気持ちを、物語という形で考えようとしたのである。
その流れで長谷川は、創作のテーマが一貫して「自分の頭で考えること」だったと述べた。その後、作品を読んでくれる人との出会いを経て、創作同人会や金原瑞人のゼミに参加し、批評を受けながら書き直したという。自分で考えるという軸を保ちつつ、他者の意見を通して技術を磨いている。
この名言が示す深い意味|反抗と判断は同じではない
人から言われたことへ疑問を持つのは、自分の理解を深める最初の一歩になる。ただし反対すること自体を目的にすれば、判断の中心は依然として相手に置かれたままだ。なぜ賛成できないのか、どんな根拠があるのかを自分へ問うことが重要になる。
ファンタジーは現実にはない世界を描くが、人が何を正しいと信じ、なぜ対立するかという問題を扱うことができる。長谷川は異なる「普通」を持つ少年たちを描き、簡単には分かり合えない関係を物語にした。現実の決まりを別の世界へ置き直すことで、当然だと思った前提を問い直せる。
一方、自分の頭で考えるとは何もかも一人で解決することではない。知らない事実は調べ、理解の違いは相手へ聞く必要がある。自分で判断するためにこそ、他人から学び、反対意見へ触れることが役立つという点を忘れたくない。
この名言の現代的な解釈|答えが先に届く時代に
検索や生成AIで素早く答えを得られると、自分で問いを作る前に説明を受け取ることが増える。便利な一方、なぜその答えが適切かを確かめなければ、分かったつもりになる場合もある。答えを得る速さと、判断の根拠を持てることを区別する姿勢が必要だ。
学校で意見を求められたとき、模範的な答えを探してしまうこともある。しかし価値観の関わる問いでは、一つの答えだけで全員が納得するとは限らない。自分が何を重視し、どこに疑問が残るかを説明することが、考える力を育てる。
ただし、専門家の知識や安全に関する決まりを無視する理由にこの一節を使ってはいけない。確認が必要な情報は確かめ、危険がある場合は適切な支援を求めるべきだ。自立した判断と、他者への信頼や相談を両立させることが現実的な態度である。
この名言を日常生活で実践する方法|違和感を問いへ変える
普段当たり前だと思っている決まりを一つ取り上げ、何のために存在するのかを考えてみる。必要な理由が分かれば納得できるかもしれないし、改善できる点が見つかるかもしれない。賛成か反対かを急ぐ前に、理由を問い直す習慣が大切だ。
次に、違う立場の人がどう考えるかを聞いてみよう。意見が異なる相手とすぐ結論を合わせる必要はない。背景を知ることで、自分が見落としていた条件へ気づく場合がある。自分の頭で考えるためにこそ、知識と視点を増やすのである。
知らないことへ気づく喜びを語った金原瑞人の翻訳と調査に関する記事も参考になる。長谷川が教わった人物でもある金原の言葉と並べると、考え続ける力には、分からないと認める姿勢も必要だと分かる。
まとめ|物語を通して自分の判断を育てる
「自分の頭で考えること」は、2026年8月17日公開の「好書好日」長谷川まりる本人インタビューで、創作の原点を振り返った回答の中にある。幼い頃の読書や家庭での経験、物語を書き始めた理由を説明する文脈で確認できる一節だ。
長谷川は周囲の価値観へ疑問を持つ気持ちを創作へつなげる一方、同人会での批評や他の作家からの助言も受け入れ、技術を磨いてきた。他人に従わないという単純な姿勢ではなく、自分で考えるために学び続ける態度が表れている。
私たちも、疑問が生まれたときすぐに正解を選ばず、その理由を確かめることができる。他人の考えへ耳を傾けながらも、最後は何を大切にするかを自分で問い直すことが、この言葉から得られる教訓である。