結果だけを追うことから、問いを変えることへ
競泳選手の新開誠也は、地元での国体開催が延期になった経験を振り返り、「どうすれば成長できるのか」を考えながら競技に向き合うようになったと語った。結果を出したいという気持ちを捨てたのではなく、結果に至る道筋へ目を向けるようになったのである。目標を失ったとき、何を変えられるのかを自分に問いかけた言葉と読める。
勝ちたい、代表になりたいという目標は、練習の方向を決める一つの助けになる。しかし大会がなくなったり、予定が変わったりすれば、目標のために用意してきた計画が揺らぐ。外部の予定に左右される結果と、自分で見直せる過程を区別することが必要になる。
新開の問いは「なぜ勝てなかったのか」とは少し違う。結果を振り返るだけでなく、これから自分がどう変わることができるかを尋ねている。次の行動を考えられる問いへ言い換えたところに、この一節の実践的な意味がある。
もちろん、問いを変えるだけで必ず競技力が伸びるわけではない。練習方法、指導環境、身体の状態など多くの要素が関わる。考え方の変化を魔法のような成功法則として扱わず、改善の出発点として読む必要がある。
原典|JOCアスナビ企業説明会での本人の言葉
出典は日本オリンピック委員会の「JOCの就職支援『アスナビ』:8月20日企業説明会を実施」である。ページの表示日は2026年9月1日であり、記事中の就職希望アスリートのプレゼンテーション欄に、新開誠也の本人コメントが掲載されている。競技、水泳/競泳、話者、発言の位置を公式資料で直接確認できる。
新開は、鹿児島で予定されていた国体が高校一年生のときに延期となり、大きな喪失感を味わったと説明する。その後、結果のみを目指すことから、成長するための方法を考える姿勢へ移った。発言の背景には本人の予定を変えた具体的な出来事がある。
本文では、競技の練習だけでなく生活習慣や身体づくりも見直したことが続けて語られている。その後、ジュニアパンパシフィック選手権での成績や栃木国体での優勝に言及している。結果を軽視したのではなく、結果へ至る準備の範囲を広げたという関係が見える。
同じ資料は競泳のチーム活動や大学での勧誘担当としての経験にも触れる。新開は競技の外で高校生や保護者と対話し、信頼関係を築く力を学んだという。一人で速く泳ぐことと、周囲と向き合うことの両方を成長として考えている。
この発表は企業向けの就職支援イベントにおける本人プレゼンテーションの掲載記録であり、発言時の未編集音声を独立に確かめたものではない。公式に掲載された発言と、後日の試合結果を混ぜないことも確認の条件となる。
成長を考えることと、結果を求めることは両立する
選手が成長を考えるとき、単に努力時間を増やすだけでは十分でない場合がある。練習の目的を整理し、何が改善したかを確認し、必要なら方法を変える。同じ行動を繰り返すことと、以前よりできることを増やすことは違うのである。
体調や休養の重要性も見過ごせない。競技への強い思いが、限界を超えた練習を正当化する理由になれば、かえって継続を難しくする可能性がある。長く挑戦するための条件を整えることも成長へ向かう判断と考えたい。
結果は他者との比較で決まることもある。一方、何を理解したか、どんな判断ができるようになったかは、昨日の自分と比べることもできる。異なる尺度を使い分けることで、順位だけでは見えない変化を確かめられる。
とはいえ、自分の変化にだけ目を向ければ競技の勝敗を気にしなくてよいという話でもない。競技には目標としての結果がある。勝負に向き合う厳しさと、成長の過程を確かめることを対立させないところに言葉の豊かさがある。
スポーツの外で問いを使うとき
仕事で計画が中止されたとき、それまでの努力が無意味になったと感じることがある。しかし結果として使われなかった知識や経験が、別の場面で役立つ可能性もある。失われた機会と、残った学びを区別することから考え直せる。
勉強でも、点数だけを目標にすると、難しい問題に出会うたび自信を失いかねない。どの考え方が身についたのか、何を質問できるようになったかを振り返る方法がある。改善につながる小さな変化を具体的に言葉にしてみるとよい。
同じJOCの公式資料を手掛かりにした西内悠人「自分の中のもう一人の自分と対話をする」は、自分への語りかけで状況を捉え直す姿勢を扱う。新開の言葉は、延期された大会をきっかけに成長の方法を考える問いだ。自分との対話と、行動を変えるための問いを読み比べられる。
最後に残るのは、「成長」と呼ぶものを誰が決めるのかという問いである。他人の期待だけに合わせるのでなく、自分がどこを改善したいかを見つめたい。結果を願いながら、結果だけでは決められない自分の変化に気づくことが、この言葉を競技の外でも読む意味になる。