はじめに
“It is better to take many Injuries than to give one.”――「多くの傷を受けるほうが、一つの傷を与えるよりもよい」は、『Poor Richard’s Almanack』1735年版に確認できます。
ここでの injuries は、必ずしも肉体的な「傷」だけを意味しません。他者から受ける害、不当な扱い、侮辱なども含みうる語です。
旧記事では独立戦争やフランクリンの苦難から生まれた自己犠牲論として説明していましたが、その背景は原典から確認できません。
1735年のPoor Richardにある短い倫理的警句
この一文は、長い政治論や宗教論の結論ではなく、暦の中に置かれた短い格言です。
内容はかなり強い。自分が多くの害を受けることより、自分が一つの害を与える方を悪いものとして置いています。
ただし、「他人からどんな暴力や虐待を受けても耐えよ」という安全上の一般原則へ変えるべきではありません。短い道徳的警句と、現実の危険から離れる判断は別です。
「自己犠牲が成功を生む」という意味ではない
旧記事では、自己犠牲、リーダーシップ、対立回避などへ大きく展開していました。
しかし原文は、成功法則を語っているわけではありません。「害を受ける側」と「害を与える側」を比較し、後者になることをより避けるべきだとする倫理的な優先順位です。
まずその短い構造を守る方が、この格言の厳しさが残ります。
現代に引き寄せて読むなら
自分が不快な思いをしたとき、同じだけ相手へ返したくなることがあります。この言葉を、報復によって自分も「害を与える側」へ回ることをどう考えるか、という問いとして読むことはできます。
一方で、不当な扱いに抗議すること、境界線を引くこと、危険な相手から離れることまで否定する必要はありません。
まとめ
“It is better to take many Injuries than to give one.” は、『Poor Richard’s Almanack』1735年版に確認できます。
フランクリンの人生上の苦難から背景を作らず、自分が害を受けることより、自分が害を与えることを強く避けるPoor Richardの倫理的警句として読むのが安全です。
出典メモ:Benjamin Franklin [Richard Saunders], Poor Richard’s Almanack (1735).
フランクリンとPoor Richardをさらに読む
ベンジャミン・フランクリン人物ページでは、印刷・科学・政治・外交と、真正な文章・誤帰属を横断できます。『Poor Richard’s Almanack』作品ページでは、年鑑の筆名、古いことわざの再利用、1758年の再編集まで含めて読めます。