はじめに
「自然は決してわれわれを欺かない。われわれ自身を欺くのはいつもわれわれである」。これは『エミール』に明確な原典がある真正なルソーの文章です。
しかし「自然は常に善で、人間社会だけが嘘をつく」という自然礼賛として読むと、この箇所の意味から離れます。
感覚と判断を区別する
この一節の前後でルソーは、感覚と判断の違いを論じています。感覚そのものは「私はこう感じている」と受動的に告げます。一方、知覚や観念では、人間が比較し、関係を結び、判断します。
そこで誤りが入り込む。つまり「自然が欺く」のではなく、私たちが感覚から関係を読み取り、判断するときに誤るという話です。
まとめ
この名言は真正ですが、自然環境を信頼しようという格言ではありません。
感じたことと、それについて自分が下した判断を混同しない。ルソーの教育論の中にある、認識の形成をめぐる一節です。