はじめに
「人を非難するのは、天に向かってつばをするようなもので、必ず我が身に返ってくる」。デール・カーネギーの言葉として日本で流通しています。
ただし、『How to Win Friends and Influence People(人を動かす)』で確認できる本人の表現は、少し違います。カーネギーは「批判は伝書鳩のようなものだ。いつも家へ戻ってくる」という比喩を使っています。
原文は「空へつば」ではなく「伝書鳩」
『人を動かす』Part One, Chapter Oneでカーネギーは、批判・非難・不平が人を変えるうえで有効ではないと論じます。
批判された人は自分を正当化し、逆にこちらを批判する可能性が高い。そこでカーネギーは、批判は伝書鳩のように送り手へ戻ると表現しました。
日本語の「天に向かってつばをする」は意味の近いことわざ的な言い換えですが、本人の原文そのものではありません。
「批判するな」は、問題を指摘するなという意味ではない
この一節だけを使うと、「相手を傷つけるから何も批判してはいけない」という教訓に見えます。しかし『人を動かす』での焦点は、相手を変えたいときに、人格を責めることが本当に有効なのかという問題です。
事実を確認すること、危険な行為を止めること、改善点を伝えることまで否定しているわけではありません。問題は、非難によって相手の防衛反応を強め、自分の目的から遠ざかることです。
自分を変える方が「利益が大きい」
同じ章でカーネギーは、誰かを変えたいならまず自分から始めた方が、利己的に考えても有益で危険が少ないと書きます。
相手の問題を見ないふりをするのではなく、最初に「自分の伝え方は目的に合っているか」を点検する。そこにこの章の実践性があります。
まとめ
「天に向かってつばをする」という日本語は、デール・カーネギーの原文そのものではありません。
本人の『人を動かす』では、“Criticisms are like homing pigeons. They always return home.” という伝書鳩の比喩が使われます。批判が悪だから戻ってくるという神秘的な話ではなく、批判された相手が自己弁護し、こちらを非難し返す人間関係の構造を説明した文章です。
出典メモ:Dale Carnegie, How to Win Friends and Influence People, Part One, Chapter One.
デール・カーネギーの人物ページへ → 『人を動かす』『道は開ける』、人間関係、不安、継続と、名言の出典強度をまとめて読めます。