ショー『ウォレン夫人の職業』「人生に美もロマンスもない」|ヴィヴィーの台詞と場面

はじめに

「私にとって人生には美もロマンスもありません。人生はあるがままです。私はそれをあるがままに受け入れます」という言葉には、ショーの戯曲『Mrs Warren’s Profession(ウォレン夫人の職業)』第4幕という明確な出典があります。

ただし、これはショー本人の人生観ではありません。話者は主人公の娘ヴィヴィー・ウォレンです。

プラードの「美とロマンス」への誘いを拒む場面

第4幕でプラードは、ヴィヴィーにイタリアへ行き、美やロマンスに浸ることを勧めます。

それに対しヴィヴィーは、“there is no beauty and no romance in life for me. Life is what it is; and I am prepared to take it as it is.” と返します。

彼女は抽象的な哲学として「人生には美が存在しない」と証明しているのではありません。自分の母親の生計の現実を知り、恋愛や芸術的な慰めより、仕事と自立を選ぼうとしている人物の台詞です。

「現実を受け入れれば幸福になる」という教訓ではない

旧記事では、この言葉をマインドフルネスや「ありのままの人生を受け入れる」心理的教訓へ広げていました。

しかし戯曲の中心には、女性の経済的自立、売春、階級、結婚、労働があります。ヴィヴィーの「Life is what it is」は、そうした具体的な社会条件を見たうえでの選択です。

単なる受容ではなく、幻想を捨てて働くことを選ぶ人物の決断として読む方が場面に近いでしょう。

作者の思想と人物の選択を同一視しない

ショーは社会制度を強く批判した作家ですが、ヴィヴィーの台詞をそのまま「ショーの人生哲学」と呼ぶ必要はありません。

戯曲では人物同士の衝突を通じて問題が立ち上がります。ヴィヴィーの冷徹さも、プラードの美への信頼も、それぞれ作品を構成する声です。

まとめ

「人生には美もロマンスもない」は『ウォレン夫人の職業』第4幕の真正な台詞です。

ただし話者はヴィヴィー。母親の職業と社会の現実を知った若い女性が、ロマンスより仕事と自立を選ぶ場面に戻して読む必要があります。

出典メモ:George Bernard Shaw, Mrs Warren’s Profession(1893年執筆), Act IV. Project Gutenbergの戯曲本文で、プラードのイタリア旅行への誘いにヴィヴィー・ウォレンが応じる場面と英文を確認できます。日本語は当サイトの説明訳で、ヴィヴィーという登場人物の台詞であり、ショー本人が発した言葉ではありません。

バーナード・ショーを人物から読む

ジョージ・バーナード・ショー人物ページでは、本人が書いた警句、戯曲の登場人物の台詞、後世に付与された出典未確認の言葉を区別しながら、逆説・教育・欲望・社会批評を横断して読めます。

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