任天堂の「社長が訊く」は、社長自身が開発者や関係者に質問する、少し珍しい形式のインタビュー企画でした。岩田聡さんは、なぜその取材を続けたのか。本人は、次の質問を考えること自体がおもしろく、その先に読者が知りたがる話があると語っています。
旧記事には、この言葉が「仕事を好きになれば成功する」という一般論につながる説明がありました。しかし出典の会話では、質問する人が台本に縛られず、相手の予期しなかった話を引き出す面白さが話題になっています。元の文脈に戻ると、好奇心と読者への責任を両方持つ聞き手という側面が見えます。
発言の出典は任天堂公式『NHK紅白クイズ合戦』の対談
任天堂公式「社長が訊く『NHK紅白クイズ合戦』」第3回では、岩田さんが元NHKアナウンサー・鈴木健二さんとの対談の中で、自分が質問をする際の考えを説明しています。鈴木さんは、番組で事前に答えが決まっているような取材に疑問を呈し、自分なら相手が答えに困るような質問を準備した、と語っています。
岩田さんも、インタビューを進めると自分が知らない展開が起きるという経験を述べ、その流れで、好奇心の向く先と読者にとってのおもしろさを考えながら次の質問を選んでいると話します。この記事の核となる発言は、任天堂が公開している本人参加の対談本文で確認できます。
「社長が訊く」と「社長に訊く」は違う
対談では鈴木さんが、企画名は「社長が訊く」なのか「社長に訊く」なのかと確認しています。それに岩田さんは、自分が訊く側にいるのだと答えています。このやり取りは、単なる言葉遊びではありません。
通常の経営者インタビューでは、社長が答える側になります。しかし「社長が訊く」では、社長が担当者へ問いを投げかけます。岩田さんは、開発に携わった人の試行錯誤を読者へ伝える聞き手でもあったのです。もちろん、実際の編集や公開作業には多くの関係者が携わっており、すべてを社長一人で制作していたと考える根拠はありません。
本人が語る「面白い質問」の条件
鈴木さんは、自分が現役のころに定型的な質問を繰り返すことを避けていたと説明しています。これに対し、岩田さんは、用意された答えに沿って進めるだけでは分からない話が出てくることに関心を示しています。
ここでの好奇心は、相手を困らせて目立つことと同じではありません。聞き手が本当に知りたい点を持ち、読者の興味も考えながら、その場で得られた回答に応じて問いを調整する。そうした姿勢が示されています。
2007年に語った「ご褒美の循環」と読み比べる
岩田さんは別の対談で、何かを続けられる人には、自分なりの「ご褒美」を見つけられる仕組みがあると話しています。当サイトでは「天才とは続けられる人」でその発言を紹介しています。「社長が訊く」を続けられたという話と、対話そのもののおもしろさが報酬になるという考え方は、相互に考える手がかりとなります。
ただし、2007年の一般的な才能の話を、後の「社長が訊く」の運営目的をすべて説明する唯一の原因として扱うことはできません。時期も媒体も異なる発言として位置づけます。
コンテンツ制作や顧客インタビューへの応用
BtoBマーケティングでも、製品説明の記事や顧客事例を作る際、準備した質問項目を上から消化するだけでは、顧客が実際に判断に迷ったところを見逃すかもしれません。岩田さんの話をヒントにするなら、知りたいことと読者に必要なことを同時に持って取材することが考えられます。
- 質問前:読者や顧客が本当に知りたい決定条件を整理する。
- 質問中:相手の答えで予想外の事実が出たら、なぜそうなったかを聞く。
- 確認:技術的な主張や数字については後から確認できる資料を求める。
- 編集:質問者の感想と、取材で確認できた事実を混同しない。
- 公開後:分かりにくかった点や追加で調べたい点を記録する。
これは現代のコンテンツ制作へ応用した編集上の提案です。岩田さんが同じ取材チェックリストを使っていたという主張ではありません。
出典と確認できない範囲
判定:任天堂公式の対談本文で本人発言を確認済み。 記事で扱う「好奇心の向き」「次の質問」「読者にとっての面白さ」という要素は公式対談から確認できます。ただし、これが「社長が訊く」を始めた唯一の理由だとは判断せず、継続していた動機の一つとして扱います。
実出典:任天堂「社長が訊く『NHK紅白クイズ合戦』」第3回。関連:2005年のGDC講演に見る「社長・開発者・ゲーマー」、出典監査ガイド。
