岩田聡「天才とは続けられる人」|2007年の対談で語った「ご褒美」の仕組み

人が疲れてやめてしまうことを、長く続けられる人がいる。任天堂の元社長・岩田聡さんは、そのような人を「天才」と考える、と語りました。しかし、この言葉を「誰でも我慢して続ければ天才になれる」という根性論として読むと、本人が説明した大切な前提が抜け落ちます。

2007年9月7日に公開された糸井重里さんとの対談を読むと、岩田さんは、何かを続ける人が投入した労力に対して自分なりの「ご褒美」を見つけられるかを中心に考えていました。本記事では言葉が発された場面に戻り、継続、才能、仕事の相性の関係を整理します。

出典は2007年9月7日の、ほぼ日刊イトイ新聞の対談

ほぼ日刊イトイ新聞「任天堂の岩田社長が遊びに来たので、みんなでご飯を食べながら話を聞いたのだ。」第6回「ご褒美を見つけるという才能」には、岩田さんと糸井さんのやり取りが日本語で掲載されています。これは名言だけを並べた二次的な紹介ではなく、話者と会話の順序を追える掲載資料です。

この回で岩田さんは、宮本茂さんや糸井さんと仕事をするなかで自分なりに考えた「天才の定義」を説明しています。核となるのは、他人には疲れることでも、本人は深く考え続け、突き詰められるという点です。旧記事の引用はこの発言と対応しますが、掲載資料では「人がいやがるかもしれないこと」と表記されています。

本人が先に話していたのは「続けると何が返ってくるか」

対談は、「なぜ続くゲームと、すぐにやめてしまうゲームがあるのか」という問いから展開します。岩田さんは、プレイヤーや学習者が時間や労力を投じ、そこから反応や達成感を得る循環を語っています。続けることに価値を感じられるなら、また取り組もうと思える、という説明です。

その考え方を岩田さんは、英語の学習や、絵を描く人の上達にもつなげます。たとえば学習を重ねた結果、以前は分からなかったことが分かるようになり、その変化自体がおもしろくなる。外部から褒められることだけでなく、自分で進歩を実感することも報酬になる、という読み方ができます。

この説明は岩田さんの経験に基づく考え方であって、すべての人の習慣形成を説明する確立した科学法則として提示されているわけではありません。現代の研究で同じ条件が検証されたと、本記事が主張するものでもありません。

「努力こそ天才」ではなく、「苦行にならない対象」の発見

注目したいのは、岩田さんが「続けられる人にとっては、苦行ではない」と説明している点です。周囲から見ると大変なことでも、本人には手応えがあり、気になって何度も取り組んでしまう。その違いを才能の一部として捉えています。

旧記事には「努力と継続こそが天才を形作る」「誰でも天才になれる」という断定がありました。しかし原典の趣旨は、長時間耐えれば必ず成功するというものではありません。何が自分にとって続けられる対象なのかに目を向ける方が、会話の流れに忠実です。

本人の「得意」が見つからないとき

対談では、すぐに楽しさを感じられない人に、考え方を変えることや、もう少し試すことを提案してうまくいく場合がある、とも話しています。ここから「才能の有無は最初の一回で決まる」とは言えません。少し経験して見えてくる価値もある、という余地が示されています。

ただし、健康を損なうほど苦痛な作業、危険な労働、権利を侵害される状況でも我慢すべきだ、という意味に利用してはいけません。続けるか、方法を変えるか、やめるかは、置かれた環境や安全性、本人の意思とあわせて判断する必要があります。

仕事・学びに応用する3つの問い

  • 何が自然に続いているか:強制されなくても調べたり工夫したりしてしまう活動はあるか。
  • 何がご褒美になっているか:人の評価、解けなかった問題の理解、相手の反応など、自分が手応えを感じる瞬間は何か。
  • どこまで続けるべきか:その活動は安全か。環境や費用、周囲への影響を踏まえ、続け方を変えられないか。

この問いは編集部による応用であり、岩田さんが提示した適職診断法ではありません。継続できることが、必ず市場価値や職業的成功につながるとも限りません。

関連する岩田聡の仕事観

岩田さんは別の対談で、社長の仕事を引き受ける際、好きか嫌いかだけではなく、誰が担当するのが合理的かを考えたとも語っています。「自分でやるのが合理的なら覚悟が決まる」の言葉とは、対象を選ぶ判断と、続けられる理由という異なる角度から読み比べられます。また、「名刺では社長、心はゲーマー」には、役職と好奇心の関係が現れています。

出典・文言の判定

判定:本人の対談本文で発言を確認済み。 2007年9月7日公開のほぼ日刊イトイ新聞第6回に、本人が「天才の定義」を述べる箇所があります。引用に使う場合はその会話に戻り、「天才=ただ長時間我慢した人」という独立した法則へ置き換えないことを推奨します。

実出典:ほぼ日刊イトイ新聞「ご褒美を見つけるという才能」(2007年9月7日)。全11回の対談一覧でも公開順序を確認できます。当サイトの出典監査ガイドも参照してください。

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