植松努「中途半端でも、足りないから助け合える」|TEDx講演とロケット開発

「中途半端でいい」は何を指していたのか

「中途半端は、何もしていないよりマシ」「人は足りないから助け合える」。植松努の言葉として紹介されるこの考え方は、単なる気休めの一文ではない。完璧でない自分を責めて活動をやめるより、今できる部分を持ち寄ることで新しい仕事が生まれるという、実際の技術開発の経験から語られた話である。

この内容は2014年7月13日のTEDxSapporoで植松が行った「思うは招く」の講演に見られる。運営団体が登壇・講演を記録し、公開された講演動画の書き起こしにも「中途半端」「足りないから助け合える」という趣旨の発言が確認できる。ただし、旧記事の長い引用は複数の発言をつないだ形であり、句読点や省略箇所を含めて動画と逐語照合したものとしては扱わない。

旧記事は「不完全な自分でも必ず成功できる」という一般的な自己肯定の話が中心だった。しかし、植松の講演は自信を失う過程だけでなく、助け合って研究開発することまで含む。何かができないとき、それを隠すよりも、補える人と組むという具体的な答えを語っていた。

電磁石を作る会社がロケット研究にも参加した理由

植松電機は北海道赤平市にある企業で、電磁石を用いた機器の設計・製造と、研究開発支援、教育活動を手がける。公式の会社紹介では、1962年に始まった事業が、建設・リサイクル現場向けの装置へ発展したことが分かる。最初から宇宙だけを専門とする研究所だったわけではない。

植松は、北海道大学でCAMUIロケットの研究をしていた永田晴紀教授との出会いを経て、子どものころから憧れていた宇宙開発に関わるようになった。TEDxSapporoの公式プロフィールにも、その出会いをきっかけに研究支援を約束した経緯が記載されている。一人で宇宙開発のすべてを知っていたから取り組めた、という話ではない。

ロケットの研究には、燃焼や材料、設計、加工、実験環境、安全管理など異なる仕事がある。研究者が持つ知識と製造会社が持つ設備や加工の経験は同じではない。それぞれの不足を単独で埋めるのでなく、できることを持ち寄って新しい実験を可能にする点が、講演の「助け合える」とつながっている。

「まだできない」と「何もできない」を分ける

何かを始めたばかりの人が、熟練者と比べて自分の技術が足りないと感じるのは自然だ。しかし、経験が少ないことと、取り組む価値がないことは同じではない。2021年に公開された植松本人の講演書き起こしでも、誰かと比べてやめてしまえば上達の機会まで失われるという趣旨が語られている。

だからといって、訓練や準備が不十分でも危険な機械を使ってよいということにはならない。航空宇宙の実験は安全に関する知識や管理体制が不可欠で、専門家による確認も必要だ。初心者の挑戦を歓迎することと、資格や安全基準を軽視しないことを両立させるべきだろう。

「ちょっとできる」は、次に何を学ぶべきか探す手がかりにもなる。試作品の一部を作ることができるなら、どの部分は専門家に相談するべきかが見える。小さな能力を過大評価するのでなく、その範囲を正確に知ることが協力を進める第一歩になる。

「足りないから助け合う」は一方的な依存とは違う

助け合いは、自分の不足をすべて他人に解決してもらうという意味ではない。たとえば設計が得意な人、加工が得意な人、説明が得意な人では、貢献できる場面が異なる。それぞれが持つ力を認め、互いの専門性を尊重する関係があってこそ共同の仕事になる。

植松電機の公式サイトには、ものづくり体験、ロケット教室、研究開発支援といった活動が並ぶ。子どもが小さなロケットを作る場と、実際の研究者が実験を行う場では求められる責任が異なるが、どちらにも自分の手で試し、周囲から学ぶ機会がある。「できる人だけが考える」という線引きを緩めることには価値がある。

ただし、仲間が集まれば必ず成功するわけではない。協力にも役割分担や費用、情報共有、うまくいかなかったときの原因確認が必要だ。助け合いは美しい気持ちだけで完成するものではなく、協力を実行できる条件を整える仕事でもある。

本人講演と企業資料から、言葉を確かめる

同じ人の言葉でも、「どうせ無理」と先に否定される問題と、「中途半端でも始められる」という問題は分けて考えたい。前者は周囲からの断念の押し付けを扱い、後者は本人の技能に不足があっても協力できるという話だ。不安のある人を励ますだけで終えず、誰と何を実現できるかへ問いを進めるところに特徴がある。

講演の開催と登壇はTEDxSapporo 2014公式記録と公式登壇者紹介で確認できる。内容は講演の非公式書き起こしとログミーの本人講演記録を照合した。前者は動画起こしの二次資料、後者は別の時期に行われた本人の講演であり、同一の発言として混同しない。

企業と技術の実際は植松電機公式の会社紹介と公式サイトの事業・教育活動で確認できる。関連する「どうせ無理」に関する記事では、他人の可能性を否定する言葉の問題を扱う。本稿の中心は「不十分な個人が協力によって研究に参加すること」に置き、似た名言の一般論へ流さない。

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