苅谷道郎「考える時間を確保し、マンネリを防ぐ」|出典と仕事の習慣

「考える時間を強制的にでもとらないと、マンネリ化し、やがて競争から置いていかれるだろう」。元ニコン取締役会長・苅谷道郎の言葉として流通する一節です。ただし今回確認できた『PRESIDENT』の本人取材無料公開部分では、この長文自体の逐語一致は確かめられていません。そこを明示したうえで、本人の確かな仕事の実践から「考える」ことの意味を考えます。

本人取材にある「考え抜く」習慣

PRESIDENT Online「3度左遷されても正しいことは主張した」は、元の『PRESIDENT』2011年1月31日号を2014年12月21日にウェブ公開した記事です。本人は、研究現場にいた時から考え抜いたことを書き留め、自分の考えを上司へ率直に伝えてきたと語っています。また、情報伝達の速度を上げることも重んじていました。

この確認できた内容は、「時間をかけて考える」という主題を裏付けます。しかし「マンネリ化」「競争から置いていかれる」という言い回しをどの場面で発したかは、同じ記事の公開範囲だけでは分かりません。

「マンネリ化」は何を指すのか

毎回同じ方法を繰り返すことが、いつも悪いわけではありません。安全性、安定品質、習熟が重要な場面では、定型の手順を守ることにも価値があります。一方、顧客の要望や技術が変わったのに、以前の方法を理由なく続けていれば、成果が下がる場合があります。

問題は繰り返しそのものではなく、変化した条件へ気づき、適切に方法を見直せているかどうかです。この整理は当サイトの考察であり、苅谷がこの分類を示したという意味ではありません。

思考の時間と情報伝達の時間

前述の本人取材では、ニコンの幹部が毎週の報告を複数の管理層へ届け、月曜の経営会議の参加者は週報を事前に読んでいるという運用が紹介されています。苅谷が読む週報は300通に達したと説明されています。

意思決定のためには、考える時間だけでなく、現場の変化を早く知ることが欠かせません。情報を受け取らずに長時間考えても、重要な条件を見落とすかもしれないからです。とはいえ、週報を大量に送る仕組みをどの組織にも推奨するものではありません。

何を問い直せばよいのか

いつものやり方を見直すには、目的は変わったか、使える資源は変わったか、現場に新しい不満が出ているか、今までの成果を何で判断しているか、といった問いが考えられます。自分の意見と反対の情報も集めることで、思い込みを減らせる場合があります。

これは今回のテーマから構成した実践例であり、本人の取材から同じ手順を再現したものではありません。

考えることと決めないことは違う

会議を減らして考える時間を増やせば、必ず創造的な成果が生まれるわけではありません。問題に必要な期限や、判断しなかった場合の影響も検討する必要があります。考えることは、決断を先延ばしするための理由ではないでしょう。

逆に、急いで決めることだけを価値とすると、あとから大きな手戻りが起きる場合があります。熟考と実行の両方を、仕事の条件によって調整することが現実的です。

競争に勝つだけが目的なのか

企業は事業を続けるために競争相手や市場の動きを理解する必要があります。しかし、短期的な順位や売上だけでは測れない価値もあります。安全、従業員の働き方、顧客との信頼関係などを犠牲にして競争へ追いつけばよいとは限りません。

旧記事のように「考えれば必ず競争に勝てる」と読ませることは根拠に乏しく、競争に関する流通引用から直接導ける結論でもありません。

二つの関連記事とつなげる

当サイトの「水曜日は考える時間」は、曜日を特定した予定の組み方を扱っています。一方、「3度左遷されても意見を伝えた」では、考えを記録し組織内で伝えることを扱っています。関連するテーマを持つものの、三つの流通文言が同じ取材で連続して発言された証拠は、今回の調査では確認していません。

出典と確認範囲

出典状態:要検証。苅谷が長く考え、記録し、情報伝達を速くすることを重んじた事実は『PRESIDENT』2011年取材の公開部分で確認できました。「考える時間を強制的にでもとらないと、マンネリ化する」という文章の初出、掲載ページ、逐語一致は未確認です。

資料:PRESIDENT Online(元記事『PRESIDENT』2011年1月31日号)。関連記事:「水曜日は考える時間に」。

ほかの記事を探す

記事の訂正・出典情報は、お問い合わせから該当記事のURLと根拠資料をお知らせください。