苅谷道郎「3度左遷されても意見を伝えた」|ニコンでの思考と情報共有

「私は過去に3回左遷され、一度は窓の外まで飛ばされました」。元ニコン取締役会長の苅谷道郎は、仕事で自分の考えを伝えることについて、こう振り返っています。この話は、上司と衝突さえすれば成功できるという武勇伝ではありません。『PRESIDENT』の取材では、考え抜いたことを言葉にし、情報を組織で共有するという、一見異なる二つの習慣が続けて語られています。

発言の出典は『PRESIDENT』2011年1月31日号

PRESIDENT Online「3度左遷されても正しいことは主張した」は、雑誌『PRESIDENT』2011年1月31日号の記事を2014年12月21日にウェブ公開したものです。奈良雅弘による、経営者のコミュニケーションのあり方を取り上げる連載に掲載されています。ウェブで公開されている範囲に、苅谷が3回の左遷と上司との衝突を振り返る発言が実際にあります。

注意したいのは、雑誌の発行は2011年、ウェブ公開は2014年ということです。旧記事ではこの区別がなく、どの時代のどんな取材なのか不明でした。今回は媒体・掲載時期・話題を明示しました。

「窓の外まで飛ばされた」は何を指すのか

本人の回想にある「窓の外まで飛ばされた」という表現は、ここでは比喩的な言い方として紹介されています。具体的にどの部署からどの部署へ配置転換されたのか、当時の発令通知がどう書かれていたかは公開範囲から確認できません。

また、本人が正しいと思っていた意見の中身や、それぞれの衝突の原因についても、この短い掲載部分だけでは個別に検証できません。「三度左遷されたのだから常に本人が正しかった」と結論することは避けるべきでしょう。

自分の考えを率直に伝えた結果

記事では、苅谷は自分で考え、正しいと思ったことを率直に言った結果、上司と衝突したと語っています。自分の見解を持つことと、それを他人へ伝えることは別の行動です。仕事では違う役割や情報を持つ人同士が判断するため、意見が一致しないこともあります。

ここで考えるべきなのは「意見は常に押し通すべきだ」ではなく、何を根拠として判断し、どこまで確認したうえで発言するかという問題です。相手の情報が自分より正しい可能性もあります。意見を持つことと、自分を絶対に正しいと考えることは違います。

同じ記事は「情報伝達の速さ」も重視する

苅谷の回想の後には、考えることには時間をかけても、情報を伝えることは速くすべきだという話が続きます。記事によると、当時のニコンでは部長級以上が週報を複数の上位者へ送り、苅谷自身が毎週多数の週報を読んでいたと説明されています。

つまり、長く考えるのは組織の情報を遮断して独りで思索することとは違います。現場の様子を短い時間で共有してもらい、その情報をもとに判断する。情報を伝える時間と考える時間を分ける姿勢が示されています。

300通の週報は誰にでもできる方法か

記事では苅谷が読んでいた週報の数が300通に達したと述べられています。だからといって、すべての会社が週300通の報告をトップへ送るべきだという意味ではありません。社員数、部門数、技術的な仕組み、組織の文化が異なれば、最適な情報共有は変わります。

特に一方通行の報告が多すぎると、書くこと自体が目的となり、現場の負担が膨らむ場合があります。「共有する側の手間」と「判断する側が得る価値」を両方評価する必要があります。

率直さと相手への尊重を両立できるか

意見を述べるときは、観察した事実、そこからの推測、実行したい提案を分けると議論がしやすくなります。反対意見が出たときにも、どの事実が違うのか、優先順位が異なるのかを確かめることができます。

これは当サイトによる現代的な応用です。苅谷が元の記事で、議論をこの三分類で整理する手順まで説明したわけではありません。本人の経験から考えられる実践と、本人が実際に語った内容は区別しています。

左遷の経験を美談だけにしない

人事異動や評価の不一致があることは、必ずしも社員本人の勇気や独立心の証明にはなりません。本人の働きに問題があった場合や、逆に組織の側が不当な判断をした場合もあり得ます。個別の事実を確認せずに「左遷された人ほど正しい」と一般化することはできません。

苅谷本人は、そうした経験の結果として現在の自分があると振り返っています。しかしそれは、誰もが同じ苦難を経験するべきだとか、不当な扱いを我慢し続けるべきだという指示ではありません。

関連する「考える時間」の記事と読み比べる

当サイトには「水曜日を考える時間にする」、「原理原則に則して考える」という関連記事があります。いずれも苅谷道郎に帰属する発言を扱いますが、同じ『PRESIDENT』の公開部分ですべての逐語引用を確認できたわけではありません。

似た考えが並ぶからといって、別々の流通文言を一つの対談の連続した原文として組み立てることは避けます。

出典と確認範囲

出典状態:出典確認済み(本人への取材を掲載した媒体の公開部分に短い引用あり)。『PRESIDENT』2011年1月31日号の記事が2014年12月21日にウェブ公開され、3度の左遷、意見を率直に述べた理由、情報共有の実践が確認できます。ただし、人事異動の具体的な部署・当時の内部記録は独立して検証していません。

資料:PRESIDENT Online「3度左遷されても正しいことは主張した」(2014年12月21日公開、元記事は『PRESIDENT』2011年1月31日号)。関連:「考える時間」の確保 / 「マンネリ化を避ける思考」。

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