樹木希林「失敗したら、そこからスタート」|『120の遺言』とやり直さない考え方

「失敗したらね、そこからスタートなの。あんまり深く考えない」。樹木希林の言葉として紹介されるこの一節は、失敗したら反省しなくてよい、という意味で受け取られやすい表現です。しかし、もう一つの読み方があります。起きたことを消して最初に戻るのではなく、失敗が起きた現実から始め直すという発想です。

出典は宝島社『樹木希林 120の遺言』

出版社・宝島社は2019年6月1日に、書籍『樹木希林 120の遺言』(2019年1月28日発売)の読者が選んだ言葉のベスト5を発表しました。その中で「失敗したらね、そこからスタートなの。あんまり深く考えない。」は3位に挙げられています。宝島社の公式発表から、少なくとも書籍で取り上げられた言葉であることと、出版元が提示した文言を確認できます。

一方で、この資料だけからは、樹木がその発言をしたインタビューの日時・相手・番組名までは確定できません。現段階では「『120の遺言』収録の言葉」と明示し、発話場面を想像で補うことはしません。

「そこからスタート」の意味

失敗したらね、そこからスタートなの。

多くの場合、失敗すると人は「失敗する前の状態に戻りたい」と考えます。しかし、一度起きた出来事や費やした時間は、なかったことにはできません。そうであれば、まず現在地を確かめ、その場所から次の判断をしていくほうが現実的です。

書籍を紹介する読書記録には、同じ言葉の前に「元に戻らない」「やり直しをしない」という趣旨の発言が続く形で記されています。ただし、当サイトではこの再録を独立した一次資料として確認したわけではありません。前後関係を知る手掛かりにはなっても、発話時の逐語記録として断定しません。

「そこから」は、失敗した事実、これまでに分かったこと、残った資源、関係者の状況などを含めた現在地を意味すると読めます。失敗はその人の価値を決める判決ではなく、次に進む際の条件になり得ます。

「あんまり深く考えない」は、考えるなという命令ではない

言葉の後半は、検証や謝罪が必要な場面で「何も考えなくてよい」という免罪符にはなりません。例えば、他人に損失を与えたなら、まず事実関係の確認、説明、必要な対応が求められます。その責任を果たすことと、何度も同じ後悔を繰り返して自分を追い詰めることは別です。

反省は、次の行動を変えるためには役に立ちます。一方、原因や改善点が見えた後も、同じ場面を頭の中で再生し続けるだけなら、前に進む助けにはなりにくいでしょう。ここでは、必要な検証は行い、不要な反芻は長引かせないという解釈ができます。

仕事の失敗を例に考える

たとえば企画が採用されなかったとき、「なぜ自分は駄目なのか」と考え続ける代わりに、顧客理解、企画の根拠、提案の伝え方のどこに改善余地があったかを確かめることはできます。あるいは状況が変わり、そもそも当初の目標を手放した方がよいかもしれません。重要なのは、過去の一手を打ち消すことではなく、変わった条件の下で意思決定を更新することです。

この応用は当サイトの解釈であり、樹木が企業の仕事術を論じたという意味ではありません。実際の失敗への対応は、危険や損害の大きさによって大きく異なります。

言葉を「再挑戦しなさい」という圧力にしない

失敗のあと、すぐに立ち上がれない時期があるかもしれません。その時に、この一節を自分や他人に「すぐ行動しなさい」と迫るために使うのは逆効果です。回復、休息、助けを求めることも、現在地から始める行動の一部です。「深く考えない」は他人への一律の命令ではなく、考え過ぎて身動きが取れないときに使える一つの視点として受け止めるのが適切でしょう。

「失敗」をどう扱うか、三つの視点

第一に、何が起きたかを整理する。第二に、自分が変えられることと変えられないことを区別する。第三に、次の小さな選択を考える。これらは名言の原文に書かれた手順ではなく、当サイトがその言葉を生活に応用して組み立てたものです。大切なのは、名言を万能の成功法則に作り替えないことです。

出典と確認範囲

出典状態:書籍収録を出版元資料で確認。発話時の記録は未照合。宝島社『樹木希林 120の遺言』の収録語句として確認できました。ただし、発言の初出となる取材記録や前後の逐語録は特定できていません。ネット上の長い再録についても、原資料と直接校合していません。

資料:宝島社『樹木希林 120の遺言』読者が選ぶ言葉ベスト5(2019年6月1日) / 読書記録「樹木希林 120の遺言」(周辺表現の参考。一次資料として未照合)。

関連して読む:「あんまり頑張らないで、でもへこたれないで」 / 「おごらず、他人と比べず、面白がって」 / 出典状態の読み方。

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