樹木希林「あんまり頑張らないで、でもへこたれないで」|2018年NYの言葉

「どうぞ、物事を面白く受け取って愉快に生きて。あんまり頑張らないで、でもへこたれないで」。樹木希林のこの言葉は、2018年7月、ニューヨークでのインタビューに答えた際の言葉として書籍に収録されています。しんどいことを無理やり笑い飛ばせと言うのでも、努力を全面的に否定するのでもありません。その発言が置かれた時期と、「頑張らない」「へこたれない」の二つを一緒に読むことが大切です。

原典の手掛かりは2018年7月のニューヨーク取材

2018年7月、樹木希林はニューヨークの日本映画祭「JAPAN CUTS」に参加しました。同月26日には現地の日系メディアによる囲み取材も行われ、DAILYSUN NEW YORKがインタビュー内容を掲載しています。75歳の樹木が、受賞、映画、役者という仕事への姿勢などを語った時期です。

この言葉自体については、宝島社の書籍『樹木希林 120の遺言』を紹介するwithnewsの記事が「2018年7月、ニューヨークでインタビューに答えて」と出典状況を明示しています。出版元・宝島社の2019年6月の発表にも収録語句として掲載され、読者アンケートで2位になったことが確認できます。

ただし、上記のDAILYSUN NEW YORK記事にこの引用文そのものが掲載されていると確認したわけではありません。また、現地取材の映像・録音まで直接照合していません。「当時ニューヨークでインタビューを受けたこと」と「書籍がこの一節をニューヨークでの発言として伝えること」を分けて記録します。

頑張らないことと、諦めることは同じではない

あんまり頑張らないで、でもへこたれないで。

この文章のポイントは、後半だけを「粘り強く頑張ろう」と読むと、前半と矛盾してしまうことです。反対に「頑張らない」だけを抜き出して、投げ出すことを勧める言葉とするのも適切ではありません。樹木の言い方は、力の入れ具合を見直しつつ、生きることそのものは簡単に手放さないという、微妙な均衡を含んでいます。

「へこたれない」を、弱音を一切吐かないという意味に置き換える必要はありません。疲れたら立ち止まる、助けを求める、目標を変えるといった選択もできます。その上で、今の自分が扱える範囲で物事に向き合っていく。そんな受け止め方のほうが、二つの文を無理なくつなげられます。

「面白く受け取って」とは、事実を肯定することではない

望んでいなかった出来事を「面白い」と思うことは、しばしば難しいものです。辛いことを辛いと感じるのは自然であり、無理に喜ばなければならないという意味でもありません。少し時間がたったあとで、同じ出来事を別の角度から見られるかもしれない。その余地を残す姿勢として、冒頭の言葉を読むことができます。

仕事での失敗なら、落ち込む気持ちはそのままにしつつ、何が予想外だったかを探る。予定が狂った一日なら、その日にしか見つけられない発見を拾ってみる。ここでいう「面白さ」は、気合いで楽しさを作ることではなく、視点を一つ増やしてみることです。

晩年の俳優としての姿勢と重ねて読む

ニューヨークの現地インタビューでは、樹木は演技を人生の唯一の目的にはしていないと語り、役を演じる仕事も「人間としてどう生きるか」という問いと結びつけて説明しています。また、成果や受賞そのものに強く執着しない姿勢もうかがえます。これらは「頑張らない」の言葉と響き合う部分がありますが、別の発言をつなぎ合わせて本人の完全な思想体系が分かった、とまでは主張できません。

彼女を特別な強さを持った人物として神格化しすぎると、読者にとっては逆に遠い言葉になってしまいます。この発言を、毎日やりきれないときに自分へ向ける小さな許可として受け止めるほうが、生活では役に立つかもしれません。

今日から試せる小さな使い方

「頑張りすぎている」と感じたら、今日減らしても困らない負担を一つ挙げる。「へこたれそう」と感じたら、最終的な成果ではなく次に取れる小さな一歩を考える。予期せぬことが起きたら、何が変わったのかを短く書き留める。これは当サイトによる現代的な応用であり、樹木が直接指示した生活術ではありません。

出典と確認範囲

出典状態:出版元資料で収録を確認。発言時の原音は未照合。宝島社『樹木希林 120の遺言』に収録された語句として確認でき、報道は2018年7月のニューヨークでのインタビューに由来すると説明しています。録音・映像を確認したわけではなく、現地でのすべての前後の言葉を復元したものでもありません。

資料:宝島社「『樹木希林 120の遺言』読者が選ぶ言葉ベスト5」 / withnews(語句と2018年7月インタビューの説明) / DAILYSUN NEW YORK(同時期の別の現地取材記事)。

関連して読む:樹木希林「おごらず、他人と比べず、面白がって」 / 樹木希林「失敗したらね、そこからスタート」 / 出典状態の見方。

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