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『三びきのやぎのがらがらどん』の原型|1843年ノルウェー民話のあらすじと結末

はじめに――三匹のヤギは、なぜトロルのいる橋を渡ったのか

小さなヤギ、中くらいのヤギ、大きなヤギ。三匹が順番に橋を渡るたび、橋の下にいる恐ろしいトロルが現れます。同じやり取りが少しずつ変化し、最後の一匹で結末がひっくり返る。そんなリズムの面白さで知られるのが、ノルウェー民話「三びきのやぎ」です。

日本では『三びきのやぎのがらがらどん』という絵本の題でも親しまれています。しかし、いま読まれている日本語絵本と、19世紀に記録されたノルウェーの民話は同じ版ではありません。物語の原型を確かめると、ヤギたちが橋を渡る理由、トロルの立場、最後の場面の迫力が見えてきます。

本記事では、アスビョルンセンとモーが集めた民話の1843年の採録にさかのぼり、現在読める古いノルウェー語テキストと研究解説を参照します。現代の日本語絵本の文面や挿絵を転載せず、古い物語を独自の文章で紹介します。

原典と出版年――1843年『ノルウェー民話集』

作品のノルウェー語題名は「De tre Bukkene Bruse」です。ノルウェーの文学資料サイトBokselskapでは、古い綴りを含む採録本文を公開しています。題の後半は、三匹が夏の山の牧場へ行って太る、という物語の目的も伝えています。

『大ノルウェー百科事典』(Store norske leksikon)の民俗学解説によると、この話はペテル・クリステン・アスビョルンセンとヨルゲン・モーがまとめた『Norske Folke-Eventyr』の1843年の冊子で初めて公刊されました。アスビョルンセンが1842年にビリ地方のアンダース・リースゴールから聞き取った話に基づくと紹介されています。

つまり、1843年は民話を新しく発明した年ではなく、確認できる公刊の年です。語り手から語り手へ伝わるうちに筋が変わった可能性があります。収集者が名前を残したことと、物語に一人の著作者がいたことは同じではありません。

あらすじ前半――小さなヤギと中くらいのヤギ

三匹のヤギは山の牧場へ行こうとします。しかし、行き道には滝の上にかかる橋があり、その下には目の大きなトロルが住んでいました。トロルは誰かが橋を踏む音を聞くと、食べてしまおうと脅します。

最初に来た小さなヤギは、自分より大きな次のヤギを待った方がよいと持ちかけます。トロルはそれを受け入れ、小さなヤギを先へ通しました。次に来た中くらいのヤギも、さらに大きな最後のヤギを待つよう促し、同じように橋を渡り切ります。

この繰り返しは、ただ同じ台詞が続くだけではありません。小さいヤギの声と中くらいのヤギの声、足音やトロルの期待が少しずつ大きくなるため、最後に何が起こるかを待つ楽しさが生まれます。古い文章でも、語り聞かせやすい構成になっています。

最後の大きなヤギは、トロルとどう戦ったのか

三匹目の大きなヤギが橋を渡ると、トロルは再び食べてやると脅します。しかし、大きなヤギはもう次の誰かを待たせません。正面から立ち向かい、角と体の力でトロルを倒し、滝へ突き落とします。

1843年の筋を伝えるノルウェー語本文には、大きなヤギがトロルの目や骨を傷つける激しい戦いの描写があります。小さい子ども向けの再話では表現を和らげる場合があるため、どの版を読んだかで印象は変わるでしょう。

戦いの後、大きなヤギも橋を渡り、三匹は山の牧場へ着きます。そこで草を食べ、すっかり太ってしまうという、少しユーモラスな結末が続きます。原作に近い筋では、トロルに襲われた後も子どもたちが救出される別の冒険が始まるわけではありません。

トロルは悪者なのか、それとも橋を守っていたのか

多くの読者は、三匹のヤギが怖い怪物に勝つ話として楽しみます。それは自然な読み方ですが、トロル自身は橋を「自分の橋」と呼んでいます。ノルウェーの民俗学的な解説では、この橋を人間の生活圏と山野の自然の境界として捉える見方も紹介されています。

この観点から読むと、ただ強い者が弱い者を追い払う話ではなく、知らない領域へ進もうとする者と、そこを支配しようとする者との対立にも見えます。もちろん、トロルが橋を本当に所有していたという法的な記録があるわけではありません。物語がどのような世界観を持っているかを考えるための解釈です。

トロルは三匹を食べようと脅しており、ヤギたちも安全に移動しようとしています。原文を読めば、大きなヤギの力は危険から身を守るために使われたと理解できますが、現代の現実の争いで力ずくの解決を勧める教訓にはすべきではありません。

「がらがらどん」という名前は何を意味するのか

原語の題名にある「Bruse」は、三匹のヤギをまとめて指す呼び名です。日本語では「がらがらどん」という響きがとても印象的ですが、それは広く読まれてきた日本語版で親しまれた呼称です。原語の題名、英語の「Three Billy Goats Gruff」、日本語絵本の題名は同じ綴りではありません。

英語の古い翻訳では「Gruff」という名が使われます。Project Gutenbergが公開する1862年刊の英語再話集にも「The Three Billy-Goats Gruff」が収録されており、三匹の順番と橋での問答が確認できます。

言葉の響きを楽しみながらも、日本語絵本の文章をそのまま19世紀のノルウェー語の原文として引用しないことが大切です。同じ話の異なる翻訳には、それぞれの言葉の選び方と作品としての個性があります。

なぜ同じ展開が三回繰り返されるのか

この話は、短いながらも登場人物が三段階で配置されています。小さなヤギは危険を避け、中くらいのヤギも同じ方法で進み、大きなヤギが最後の問題を解決します。読んでいる人は、最初のやり取りを覚えるからこそ、次に起こることを予測できます。

二度目までは期待を先へ延ばし、三度目に反転させる。繰り返しと変化で聞き手を引き込む構造は、民話を声に出して語る楽しさの一部です。子どもが足音を真似したり、誰が次に来るかを答えたりしやすい理由も、この構成にあります。

同じく動物が登場する昔話でも、『都会のネズミと田舎のネズミ』は、食事の豊かさと安心して暮らすことの違いが中心です。単に動物が話すから似た物語だと考えず、どこに山場があるかを見ると、それぞれの個性が分かります。

『オオカミと七匹の子ヤギ』や『ブレーメンの音楽隊』との違い

ヤギが登場するため、グリム童話『オオカミと七匹の子ヤギ』と混同されることがあります。しかし、あちらは家を離れた母ヤギと、家に残る子ヤギたちをめぐる物語です。こちらは三匹のヤギが、山の牧場へ向かう道でトロルに出会います。

『オオカミと七匹の子ヤギ』の原作を扱った記事では、グリム兄弟の1812年版と1857年版の違いを取り上げています。題名に「ヤギ」が含まれていても、編纂者、舞台、登場する脅威、結末は別だと分かります。

また、『ブレーメンの音楽隊』の記事では、複数の動物が旅をし、力を合わせて危機を抜ける話を扱っています。『三びきのやぎ』には互いを励まし合う場面も読めますが、最後にトロルを倒すのは大きなヤギです。旅の目的も物語の終わり方も違っています。

子どもと読むときに、何を話し合えるか

この話は足音や掛け合いが楽しく、声に出して読むのに向いています。ただし、古い採録版には激しい戦いの描写もあります。読み手の年齢や反応に合わせて、どの版を選ぶか、どこまで詳しく説明するかを考えることができます。

怖いものに出会ったらどうすればよいか、といった問いから話を始めるのもよいでしょう。しかし、小さなヤギの「後から大きいのが来る」という言葉を現実の危険への対応法としてそのまま教えるのは適切ではありません。童話の機転と、現実に助けを求める行動は別です。

また、一番大きく強い者だけが価値を持つという話にする必要もありません。三匹それぞれが危険な橋を渡り、最後には同じ目的地へ到着します。どこが面白かったか、誰の行動が印象に残ったかを話し合うことが、物語を一緒に読む時間を豊かにしてくれます。

まとめ――古い民話と現代の絵本を区別して楽しむ

『三びきのやぎ』は、三匹のヤギが山の牧場へ向かう途中、橋の下のトロルに脅されるノルウェーの民話です。小さいヤギと中くらいのヤギは先へ進み、最後の大きなヤギがトロルを倒します。その後、三匹は牧場に着き、十分に草を食べるという結末です。

1843年の採録版は確認できる古い公刊資料ですが、民話の成立年まで特定したものではありません。原語の採録本文と、後世の英訳、現代の日本語絵本を混同しないことが、出典を確かめながら楽しむ第一歩です。

小さな足音から大きな足音へ。繰り返しがつくる期待と、最後の意外な逆転。内容を知ってから読み直しても楽しめるのは、物語の構造がよくできているからでしょう。古い版も現代の絵本も、それぞれの違いを意識して味わいたい作品です。

確認した原典・版・著作権

基礎にした作品本文はBokselskap「De tre Bukkene Bruse」です。古いノルウェー語の綴りを含む採録版で、ヤギの順番、トロルとの会話、最後の戦いと牧場での結末を確認しました。

出版年、1842年の採録、民俗学上の位置づけは『大ノルウェー百科事典』の民俗学記事を参照しました。英語版の別の表現は1862年刊の英語再話集で比較しています。1843年の採録本と1862年の翻訳本を同一の版とはしていません。

アスビョルンセンとモーによる19世紀の文章は日本の通常の著作権保護期間を満了しています。ただし、現代の日本語訳、絵本の挿絵、翻案、現代の研究記事の文章には別の権利があります。本記事は既存の日本語絵本・映像・画像を転載せず、古い物語の筋を独自に説明したものです。

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