トム・ウージェック「マシュマロ・チャレンジ」|2010年TED講演が示すチームの試作力

はじめに|マシュマロ一つでチームの違いが見えるのか

スパゲッティとテープ、ひも、マシュマロだけで、できるだけ高い塔を建てる。単純に見える実験が、なぜ仕事のチームづくりに使われるのだろう。デザイナーのトム・ウージェックは2010年のTED講演で、計画を語るだけでなく、小さく作って確かめることの大切さを紹介した。

講演の題名は「Build a tower, build a team」。ウージェックはさまざまな職種の参加者にこの課題へ挑んでもらい、チームごとの行動の違いを観察してきた。塔の高さだけでなく、参加者がどの段階で試し、何を見直すかが話の中心である。

この記事ではTED公式の2010年講演と、本人のサイトにある実施ルールをもとに、課題の進め方と読み取れる教訓を整理する。講演で紹介された比較結果を、すべての子どもや経営者に普遍的に当てはまる法則とは扱わない。

マシュマロ・チャレンジのルール|18分間で塔を建てる

ウージェックの公式説明では、1チームに乾燥スパゲッティ20本、テープ約1ヤード、ひも約1ヤード、マシュマロ1個を配る。制限時間は18分。机の上で自立し、頂上にマシュマロ全体が載っている塔の高さを競う。

スパゲッティを折ったり、テープやひもを切ったりすることはできるが、材料を入れた袋を構造物に使ってはいけない。時間切れの時点で手を添えて支えている塔も失格となる。最後に手を離して立っていることが、見かけの高さ以上に重要な条件だ。

作業を始める前には簡単に見えても、マシュマロの重さを支えるには骨組みの安定が必要になる。材料が少ないことと、設計上の判断が少なくてよいことは違う。この制約の中でどのように試すかが、課題の面白さになっている。

よくある失敗|最後に載せたマシュマロで崩れる

講演では、まず役割分担や設計を議論し、時間の多くを塔づくりに使い、最後の最後にマシュマロを載せるチームが紹介される。立派に見えた塔も、頂上へ重みを加えると倒れてしまうことがある。完成直前になって初めて、最も重要な条件を試すという失敗だ。

このとき問題なのは、相談したこと自体ではない。協力するには相談が必要だが、設計が実際に成立するかを確認せず議論だけで進めると、前提の誤りに気づく時間がなくなる。計画と実験のどちらか一方ではなく、両方を行き来することが大切だ。

仕事でも、すべての資料を整えた後で顧客に見せ、最も重要な使い勝手が悪いと分かる場合がある。最後の一度に確認を集中させず、早い段階で成立条件を試すという教訓へ広げられる。

幼稚園児と大人の比較|結果をどう受け取るか

ウージェックは講演で、ビジネススクール卒業生のグループと幼稚園児のグループの取り組み方を比較する。後者はすぐに組み立て始め、マシュマロを何度も載せ直しながら試す傾向があると述べた。頭の中で完璧な答えを決めるより、実物を試しながら考えているという観察である。

ただし、幼稚園児があらゆる設計の課題で専門家より優れているという意味ではない。実施条件、参加者、比較する評価指標によって結果は変わり得る。講演中のあるワークショップの傾向を、年齢集団全体の能力判定に使わないことが重要だ。

そのうえで興味深いのは、肩書きや知識がある人ほど、最初から正解を決めようとしてしまう場合があるという問いだ。知識を捨てるのではなく、知識に頼り切らず現物から学ぶ姿勢を考えるきっかけになる。

試作品を早く作る|失敗を情報に変える

塔を作り始めてすぐマシュマロを載せれば、骨組みの弱い場所が分かる。低い塔でも失敗を観察でき、次の試作品では別の構造を試せる。早い失敗は、終盤の大きな失敗を避けるための情報になり得る。

試作品をつくることは、最初から完成度を求めないという意味ではない。必要な安全性や品質の条件を小さな規模で確かめ、少しずつ精度を高める方法だ。何が分かったかを言語化し、次の試行へ反映することで価値が生まれる。

関連して、デイヴィッド・ケリーの創造的な自信に関する講演は、小さく試すことへの不安を考える材料になる。両講演は同じ研究の証明ではないが、人が行動しながら考えることを重視する点で読み比べられる。

チームで役立てる方法|正解探しより検証の循環を

組織でこの課題を行うなら、単に勝ったチームを称えるより、どの場面で話し合い、いつ構造を試し、失敗から何を変えたかを振り返りたい。完成した塔の高さと、そこへ至る過程から得られる学びを分けて見ることが重要だ。

本当の仕事では18分で答えを出せない問題も多く、顧客や利用者への影響を十分に確かめる必要がある。それでも、前提条件を早めに検証する、役割を固定しすぎない、相手の提案をすぐに試すという工夫は応用できる。短いゲームをそのまま組織の能力測定に使わないことも忘れたくない。

協力の設計という点では、ジェーン・マクゴニガルのゲームと社会課題の講演とも比較できる。こちらはゲームによる協力の可能性を語るが、マシュマロ・チャレンジは具体的な試作品を扱う。共通するのは、参加しやすい課題から実際の行動を生み出すことだ。

まとめ|マシュマロは最後ではなく最初にも載せる

2010年のTED講演でトム・ウージェックが紹介したのは、限られた材料と18分で自立する塔を作るマシュマロ・チャレンジである。最後に重みを加えて崩れる失敗から、早い段階で試すことの意味を学べる。

チームを強くするために、すべてを直感で決める必要はない。話し合いと試作を短い間隔で繰り返し、結果を見ながら判断を更新する。小さく作り、確かめ、直すという循環が具体的な教訓になる。

主な出典:TED公式「Build a tower, build a team」2010年2月講演、トム・ウージェック本人による実施ルールと解説。材料と時間の条件は本人の手順で確認し、参加者グループの比較は講演者による観察として扱った。

ほかの記事を探す

記事の訂正・出典情報は、お問い合わせから該当記事のURLと根拠資料をお知らせください。

↑ ページの先頭へ戻る