はじめに
「良識をもつだけでは十分でない。良識をよく用いることが肝要である」。これは『方法序説』第1部の冒頭に対応する真正なデカルトの言葉です。
この一節は「知識は実践してこそ価値がある」という一般的な行動論として紹介されがちですが、原典の焦点は少し違います。デカルトが問題にしているのは、人によって理性の量が大きく違うのではなく、思考をどの道へ導くかが違うということです。
良識は比較的平等に分配されている
『方法序説』は、良識ほど人々の間に公平に分けられているものはない、という有名な逆説から始まります。誰もが自分には十分な良識があると思っているからです。
デカルトはそこから、意見の違いを単純に「頭の良さの差」で説明しません。人々が思考を異なる道へ導き、同じ対象を見ていないことに原因を求めます。
だから「優れた精神を持つだけでは十分ではない。最も大切なのは、それをよく用いること」なのです。
才能論ではなく方法論への入口
この文章は、成功するには知識を行動へ移そうという話ではありません。『方法序説』という題名どおり、正しく考えるためには思考の進め方が必要だという方法論への入口です。
非常に優れた精神でも道を誤れば大きく外れる。一方、ゆっくり進む人でも正しい道を外れなければ遠くまで行ける。デカルトはその比喩を続けています。
まとめ
「良識を持つだけでは十分でない」は真正なデカルトの言葉です。その核心は、知識を実践へ移すというより、理性を持っていることと、理性を正しく導くことは別だという点にあります。
才能の大きさより、考え方の道筋をどう作るか。この問題意識が、『方法序説』で提示される四つの規則へつながっていきます。
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理性の使い方という問題を、ベーコン、モンテーニュ、ショーペンハウアーの知識・読書論と比較しています。「知るとは何か」テーマページ →