キャリアを考えると、「自分に向いている仕事は何か」という答えを探したくなります。
でも、職種名だけで人生の方向が決まるわけではありません。
同じマーケティングでも、裁量、専門性、安定、マネジメント、生活との両立のどれを重く見るかで、合う環境は変わります。
それを考える手がかりの一つが、Edgar Scheinらのキャリアアンカーです。
アンカーは、船を動かさないための鎖ではない
キャリアアンカーは、仕事上の自己概念に関わる能力、動機、価値観のうち、重要な選択で手放しにくいものを考える概念です。
よく「8種類のどれかを診断して適職を決めるもの」と扱われますが、それだけにすると少し窮屈です。
アンカーは目的地ではありません。流されそうになったとき、自分が何を大切にしていたか思い出すための錨と考える方が使いやすいと思います。
価値観は、経験して初めて分かることがある
若い頃から「自分の価値観はこれだ」と完全に分かる人ばかりではありません。
裁量がない環境を経験して、自律性の大切さに気づく。責任の大きい仕事を経験して、肩書きより生活の持続可能性を重視するようになる。
価値観は質問票だけで発見するものではなく、経験を振り返ることで輪郭が出ることがあります。
「上へ行くこと」と「自分に合うこと」は別
昇進、年収、会社の知名度は分かりやすい指標です。
でも、それらが上がるほど自分に合うとは限りません。
上へ行き続けることを人生の正解にしなくなったと書いたのも、外から見える上昇と、自分が守りたいものを分けて考えたかったからです。
アンカーも固定しすぎない
一方で、「私はこのタイプだから」と自己像を固定すると、今度は概念に人生を合わせることになります。
役割、家族、年齢、経験によって優先順位の見え方が変わることもあります。
だから価値観は、永遠に守るルールというより、何度でも戻ってきて、必要なら書き直す場所でいいと思います。
転職で見るべきなのは、職種名だけではない
転職先を比較するとき、仕事内容、報酬、裁量、上司、文化、働き方、成長機会などを並べると、全部が良い会社はなかなかありません。
そこで「何を得たいか」だけでなく、何を失うと長く続かないかを考える。
キャリアアンカーは、その優先順位を考える補助線になります。
キャリアは、錨を持ちながら航路を変えられる
私はキャリアを、最初に正解の航路を決めて進むものとは考えていません。
キャリアは後から編集できる。ただし、何でも同じというわけでもない。
航路は変えられる。でも、自分が何を守りたいかを知っていると、漂流しにくくなる。
キャリアアンカーは、適職を当てる答えではなく、そのための問いとして使いたい概念です。