「知識とは天に飛翔する翼」は『ヘンリー六世 第二部』の台詞
「知識とは、天に飛翔するための翼である」として知られる言葉は、シェイクスピア『ヘンリー六世 第二部』第4幕第7場の一節に対応します。ただし、流通する日本語は原文の後半だけを取り出した形です。
Ignorance is the curse of God;
Knowledge the wing wherewith we fly to heaven.
「無知は神の呪いであり、知識はそれによって天へ飛ぶ翼である」といった意味です。語っているのは作者本人ではなく、Lord Say(セイ卿)です。
学問を敵視する反乱者ジャック・ケイドとの対立
この場面では、ジャック・ケイドの反乱勢力に捕らえられたセイ卿が、自分に向けられた非難へ答えています。ケイド側は、彼が学校を設けたこと、印刷を導入したこと、紙を使わせたことなどを罪のように挙げ、読み書きや教育そのものを敵視します。
セイ卿はそれに対し、学問を擁護する演説をします。その中で出てくるのが「無知は神の呪い、知識は天へ飛ぶ翼」という対句です。
単独の「勉強しよう」という格言より政治的な場面
一文だけなら、知識や教育の価値を称える普遍的な格言として読めます。しかし劇中では、教育を攻撃する暴力的な反乱勢力を前に、知識人であるセイ卿が自らを弁護する場面です。
そのため「知識があれば夢を実現できる」といった自己啓発へ広げるより、知識・識字・教育をめぐる対立の中で発せられた言葉として読む方が、原文の緊張感を残せます。
そして知識は彼を救わない
この場面の厳しいところは、セイ卿の雄弁な学問擁護が彼自身を救わないことです。ケイドは彼の言葉を受け入れず、処刑を命じます。
つまり作品の中では、「知識は翼だ」という美しい一節と、知識や理性が暴力に押し切られる現実が同時に描かれています。そこまで読むと、この引用は単なる学習意欲を高める標語以上の重さを持ちます。
まとめ
「Knowledge the wing wherewith we fly to heaven.」はシェイクスピア『ヘンリー六世 第二部』第4幕第7場、セイ卿の台詞です。
本来は「無知は神の呪い」という前半と対になっています。そして背景には、学校・印刷・識字を敵視するケイドの反乱があります。作品へ戻すことで、「知識は素晴らしい」という一般論だけでは見えなかった、教育と反知性をめぐる対立まで浮かび上がります。
出典メモ:William Shakespeare, Henry VI, Part 2, Act 4, Scene 7. Speaker: Lord Say. “Ignorance is the curse of God; / Knowledge the wing wherewith we fly to heaven.”
シェイクスピアを人物から読む
ウィリアム・シェイクスピア人物ページでは、作品に実在する一節を「作者の名言」にせず、登場人物・偽手紙・巻物など話者と劇的文脈を区別しながら横断して読めます。